ドゥービー・ブラザーズは、1970年代のアメリカン・ロック、ウエストコースト・ロックを代表するバンドで、爽快なギターサウンドによるアメリカ的ハード・ロックに特徴がある。
トム・ジョンストンは楽曲の多くを作った音楽的リーダーで、R&Bをルーツにしているが、それを感じさせないシスコサウンド的でスケールの大きいフレーズと力強いカッティングのギターが素晴らしい。
パット・シモンズは、フォークをルーツにしているようだが、ジョンストン不在のときはブルース系やカントリー系にいたるマルチなスタイルのリードギターを担当した。また、「Black Water」など多くの楽曲も作っている。
ジェフ・スカンク・バクスターは1973年から79年来日時まで参加・在籍していたが、ジャズ・ロック的なギターサウンドを持ち込んだマルチなスタイルのリードギターを演奏した。
ドゥービーズの最高のラインナップは1975年のアルバム「Stampede」で、この三人のトリプルギターが聴ける時代だが、1975年にジョンストンが不在となったので、この時期は短い。ジョンストンやシモンズを含んだツインでも充分に堪能できる。
各ギタリストの個性が様々なので、ドゥービーズの場合はジャズのようにパーソネル単位の組合せによる名演を楽しむバンドといえよう。
「Jesus Is Just Alright」。1972年「Toulouse Street」収録。
1966年のThe Art ReynoldsSingersが原曲。1969年にバーズがカバー。1972年にドゥービーズがカバーしたのが一番知られていると思われる。初めて聴いたのがドゥービーズで、それ以外は知らなかった。1972年11月にシングル化されて、1973年2月ビルボード35位。
分類としては、ゴスペル、のちにクリスチャン・ロック。たしかに、The ArtReynolds Singers版は、映画「ブルース・ブラザーズ」の教会のシーーンでR&Bバンドをバックに歌うような楽曲だ。Alrightはcoolという意味。
ドゥービーズ版は今でも定番の曲になっている。ドゥービーズはバーズ版をもとにして、ライブのレパートリーに加えた。ただし、後半部にブリッジを加えて修正している。ドゥービーズの面々は誰一人敬虔な信者ではなかったが、当時のヒッピー文化のなかで起きたジーザス・ムーブメント(イエス革命)の信者たちには人気のある曲となった。
当時、1970年のミュージカル「ジーザス・クライスト・スーパースター」が1973年に映画化されて、私も封切りを映画館で見て、音楽とダンスに圧倒された記憶がある。
「Natural Thing」。1973年「The Captain and Me」収録。作詞作曲トム・ジョンストン
シンセサイザーを初めて採用した作品。ビートルズの「Being for theBenefit of Mr. Kite!」を参考にしたようだ。
1972年の「Listen to theMusic」に列なる系統の曲。
「Take Me in Your Arms (Rock Me a LittleWhile )」。1975年のアルバム「Stampede」収録。米11位。
原曲はモータウンサウンドのエディー・ホランドが1964年に作った曲で、1965年にキム・ウェストン版が初めてシングル化され、1967年にアイズレー・ブラザーズ、1972年にジャーメイン・ジャクソンがカバーした。
トム・ジョンストンが好んだ曲で、1975年4月にシングルリリース。トム・ジョンストンのボーカルはかなりR&Bに影響を受けている。パット・シモンズは、最初はグレイトフル・デッドの演奏とフォートップスのボーカルを目指したという。
1973年「The Captain and Me」のライナーノーツから