馬俑と騎兵俑。秦始皇兵馬俑坑博物館。2号坑展示館。
2017年7月7日(金)。
馬を引く騎兵の身長と馬の耳までの高さを比べると、騎兵の方が少し高く、小形である秦の馬の特徴がうかがえる。
秦の騎馬隊はその機動力を生かし、歩兵・戦車の本隊を補助するものであった。敵兵の間隙をぬって奇襲したり、敗残の兵を追撃したり、敵軍の糧道を絶ったり、自軍の後方の安全を確保したりする重要な役目を持っているが、本隊から自立することはできない。
しかし、歩兵100万、戦車1000乗、騎馬1万とその強大さを称えられた秦軍の中で、騎兵は主力軍たる歩兵をよく支えて活躍し、秦を統一へと導いた。
馬俑と騎兵俑。
馬俑を見ると、鞍が表面に描かれている。秦の時代はまだ鐙(あぶみ)はなく、乗馬したときには膝で馬の腹を押さえて制御した。鐙がないぶん鞍も安定しないので、尻繫(しりがい)と腹ベルトでしっかり装着されていた。
鞍の下にはクッションが敷かれているが、前後にはまだ前輪、後輪という騎乗者の体を挟む突起はなく、騎乗者は少し前よりに座って安定させた。
中国では鐙は4世紀、前輪・後輪の鞍は唐代になって見られる。
馬の前髪は耳の周りをすっきりと刈りそろえて左右に分け、たてがみも項の部分を切りそろえ、尾は三つ輪か先を結んでいる。
馬の腹には、窯で焼くときのひび割れを防ぐ通気孔が見られる。
立射俑。
軽装弓兵。立って、弩を射る姿勢をしている。2号坑からは172体の立射弓兵俑が発見された。
銅殳、銅(ひ、短剣)、銅矛などの青銅製兵器。
兵馬俑坑では矢じりを含めて4万件の青銅兵器が出土したが、鉄の兵器は数件のみである。
銅の錆は内部を腐食から内部を保護する役割を持つ。刃先だけ鋭利さを保つことができる。鉄の場合は、錆びやすく、腐食は内部までおよぶので、青銅製武器は鉄製武器はこの点で優れている。
弩の青銅製引き金部分。
青銅製長剣。
秦の青銅製武器は、錆びを防ぐためにクロムメッキをしていた。剣の表面には10~15ミクロンのクロムの層があることが測定された。クロムメッキの方法の詳細は解明されていない。
青銅製鉤。
銅製矢じり。鉄製柄付き銅製矢じり。
2号坑展示館から文物展示館へ。
参考文献。「始皇帝陵と兵馬俑」(鶴間和幸、2004年、講談社学術文庫)。