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「これは戦争だ」 心を操る大量破壊兵器 内部告発者ロングインタビュー(中)

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日経ビジネスONLINE  2018124日 伏見香名子
 
「これは戦争だ」心を操る大量破壊兵器 内部告発者ロングインタビュー(中)
 
英米では、企業あるいは政府の犯した犯罪行為を告発する目的で、守秘義務契約を破ることは可能です。基本的には、民間契約が法律より優先される事はあり得ません。
ただし、それでも社員が提訴されないと言うことではありません。公益にかなわない、または、真実ではない、などという理由をつけて、訴訟を起こすことも可能でしょう。
 
数多くの証人から証言を得る必要があり、多くの人たちを紹介しました。その全ての人たちが、カメラの前の証言や、自分に関連のある証言を拒みました。人々はバノン氏と富豪だけではなく、米政府の巨大な圧力による追求を恐れたのです。
 
このため、匿名で証言を得ることさえ、非常にゆっくりとしたプロセスでした。しかし、徐々にそれは集まっていきました。同時にCA社のCEOに、彼らのとてつもなく非道徳的、かつ、違法な運営を認めさせました。彼らは偽情報を流し、政治的な議論に貢献することではなく、勝つ事だけを重視したことを認めました。
 
私にとって興味深かったのは、むしろフェイスブック社の反応でした。CA社よりも遥かに多く、FBが攻撃を試みました。彼らが背景の全て、情報操作全てが真実であると知っていたことで、彼ら自身も加担していたことになりました。
内部告発者である私に「この事を公表するな、するなら警察に通報する。なぜなら、内容は真実だからだ」と言ってきたのです。
このことで、問題の本質が明らかになったと思います。情報操作など何が起きているかを完全に熟知しているプラットフォームが存在し、それが明るみに出そうになると、彼らはジャーナリストや内部告発者を脅し、情報を遮断しようと試みたのです。
 
FBは私に責任を被せ、自分たちは被害者を装おうとしました。しかし、誰もそんなたわ言は信じませんでした。(当時の)英デジタル・文化・メディア・スポーツ大臣が議会で「FBが内部告発者を追放することなど、言語道断だ」と発言しました。
 
FBは年間、数十億ドルを稼ぐ企業です。それなのに、何ら責任を取ろうとしていません。彼らには、過ちを止める力があります。幾多の社会的、政治的な交流が起こり、情報が飛び交う場を彼らは作り、私たちの文化や社会に対し、多大な影響力を持っています。
内部告発者を犯罪者扱いし、同時に自分たちのプラットフォームを改善することを拒否するなど、とても器が小さいと感じます。私個人も、英政府と同様の見解です。言語道断だ、と感じています。
 
――(大統領選などに関する)ロシアの介入には、どの時点で疑いを抱き始めましたか?
 
私がSCL、後のCA社で働いていた頃、特にバノン氏が責任者の1人になってから、数多くのロシア人が会議に出席し始め、プロジェクトに参加し始めました。私たちのデータ・セットが、ロシアの国家プロジェクトとして、オンライン上の心理プロファイリングを担当していたチームによって、アクセスされるようになりました。
 
私たちの会社がトップ心理学者として雇用した人物は、同時にサンクトペテルブルクで、ロシア政府を資金源とする心理プロファイリング・プロジェクトにも携わっていました。プロファイリング用のアルゴリズムが、米国の有権者データを用いて作られていましたが、同じデータが、ロシアでもアクセスされていたのです。
CA社が持っていた有権者などのデータを、プーチン大統領と旧知のロシアの石油会社のCEOに送っていました。私たちの会社は、その後(ロシア疑惑を捜査している米国の)ムラー特別検察官によって、ロシアの諜報機関と関連する、あらゆる組織で情報収集を行ったことが判明し、起訴された人物も雇用していました。
 
CA社が作り、プロファイリングを行なったデータは、偽情報を使ったターゲティングに重大な役割を果たしていました。FBがこのことを問われた時、彼らはデータについて「その後どうなったのかわからない」としていましたが、ロシアの大規模なプロパガンダに流用されていたのかもしれません。このことは大きな問題で、私たちの選挙の安全性が、とてつもなく脆弱であることを浮き彫りにしています。
 
FBは自分たちが何をしていたか知っていましたし、プロジェクトに関わっていた人たちを、後に雇用もしています。違法行為はおろか、非常に繊細な個人情報を、敵意を持った国家に渡してしまうなど、とんでもなく非道徳的なことを行うことが、いかに容易だったかを示していると思います。
 
――選挙などのキャンペーンにおいて、人々を動かすために最も有効なメッセージはどんなものですか?
 
人々の世の中の見方は多様で、様々なメッセージに対する反応も人によって異なりますから、ある一つの「特効薬」は存在しません。人々についてデータを集めることの究極の目的は、あなたが作ったアルゴリズムによって、例えばABCという特定のメッセージに反応する人たちを選別する事です。
例えば、陰謀論やパラノイア的思考に弱く「国境に秘密の軍隊が存在する」「オバマは銃を取り上げに来る」「市民は監視されている」などという馬鹿げた偽のメッセージを、他の人々に比べ、より信じてしまうある特定の集団が、CA社のターゲットでした。
 
――こうしたことは「デジタル洗脳」と呼べるのでしょうか。
 
「洗脳」が、ある人の世界観を本人に気づかせないまま激変させ、行動までも変えさせてしまうことを意味するのなら、CA社が行なっていたのはまさしくそれです。
陰謀論や偽情報を、それを最も信じてしまう脆弱性を持った人たちの間で拡散し、その上で、その人たちが、真実でない事柄に関するイベントやグループに参加し、集団で抗議活動を行うよう仕向けました。
 
――現在「デジタル戦争」が起きていると思いますか。
 
米国の軍事ドクトリンには、「第5次元の戦場」(=サイバー)というものが存在します。陸・海・空・宇宙、そして情報です。
 
情報の役割は、敵の思考や行動のパターンを変えることです。「敵」とは、反対勢力の司令官かもしれませんし、テロ組織の勧誘係かもしれません。ロシアの場合は、市民のことを指すかもしれません。
敵の影響力を封じ込めたいのなら、この場合は米国ですが、人々の団結をまず破壊して社会を壊す。そして、理性のない行動を取り、気の触れた人たちをトップに選出させる。もしくは、あなたの政治的目的を支援する人物を選ばせる。成功すれば、勝者はあなたです。
 
ワシントンに核爆弾を投下する必要はありません。人々を取り込み、あなたの目的に合致する人物を選出させれば良いのです。どちらにしても、あなたは勝つことができます。敵の土台を壊し、目的を達成できるのですから。
SNSのプラットフォームはもはや、新しい「戦場」なのです。
 
今や戦闘はサイバー・スペースで起き、軍隊のみならず、一般市民を欺き、操るための情報が用いられることを理解しなければなりません。これは、戦争なのです。
 
「大量破壊兵器」の定義が、「広範囲に渡り世代を超えて長期間続く、破壊行為を行うこと」だとします。トランプ大統領のような人物を選出させること。あるいは、違法行為や操作を通じ、英国のEU離脱を成功させるという、国の政体を恒久的に激変させることは、ほぼ間違いなく「広範囲が長期間、破壊的な損害を被る」ことでしょう。
 
基本的な政体を変化させる。最も力のある国の大統領や、社会そのものを自滅させる。一国に、自らを攻撃させる。これらのことは、「大量破壊兵器」による被害であり、実際、起きている事です。爆発物や火ではなく「マインド」(思考・心)を利用する、認知的戦闘です。あなたのマインドが標的でもあり、同時に、他者に危険な情報を伝達する媒体ともなるのです。そして現状、そのことに、何の対策も講じられてはいません。

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