私が洋楽を聴きはじめた1967年時点で、ストーンズの代表曲はラジオでは、「黒くぬれ! Paint It Black"」（1966年、米1位）といわれていた。つぎに、「阿須・ティアーズ・ゴー・バイAs Tears GoBy」（1966年、米3位）で、「サティスファクションSatisfaction」(1965年)は、さほど話題にならなかったが、現在の評価で、1966年までの曲のなかでは英米で1位となり大ヒットした「サティスファクション」が代表曲とされている。ストーンズの反抗性・不良性を象徴する曲だからだ。もっとも、私は好きではない。
「19回目の神経衰弱19th NervousBreakdown 」(1966年、米1位)もわりと聴いたし、レコード屋でよく見かけた。
「タイム・イズ・オン・マイ・サイドTime Is on My Side」(1964 年、米6位)は有名な曲だった。GSのタイガースがテレビでよくカバーしており、ストーンズのカバーと紹介されていたからだ。
「マザーズ・リトル・ヘルパーMother's Little Helper」 (1966年、米４位)はLPを聴いて好きになった曲。
ローリング・ストーンズはブルース愛好家が基になったバンドだが、発表した楽曲群はロックとしかいいようがない。ともに1943年生まれで同じ小学校だったミック・ジャガーとキース・リチャーズはシカゴ・ブルースのマディ・ウォーターズおよびロックンロールのファンという共通の趣味があった。
1962年、ブライアン・ジョーンズと出会い、ブルースやR&Bのコピーバンドとして演奏活動を始めた。ただし、ブライアンとイアン・ステュアート（ピアノ、オリジナルの非正規メンバー）はシカゴ・ブルースを演奏したがったが、ミックとキースはチャック・ベリーやボ・ディドリーの演奏を好んだという。
1963年6月、イギリスでのデビューシングルはチャック・ベリーの「Come On」で、2枚目はレノン・マッカートニー作の「彼氏になりたいI Wanna Be Your Man」（英12位）であった。（なお直後に、ビートルズ版が発表された。）
ストーンズの初期の録音のほとんどは、ほかのロック・アーティストのカバーで、R&Bの要素を加えたものだった。
1964年の「Time Is on My Side」はR&Bのカバー曲だった。
「サティスファクション」では、ギターにファズ・ボックスが使用された。
「黒くぬれ! Paint It Black"」（1966年）では、ブライアンがシタールを演奏している。
「マザーズ・リトル・ヘルパーMother's Little Helper」はピルのことを扱い、問題視された。テンポの速いシャッフル・ビートのロック・ナンバーで、シタールのような音はキース・リチャーズによる12弦エレキギターのスライド・プレイ。メロディーが秀逸。
「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」1964年の曲をセルフカバー。ストリングスでアレンジされた美しいメロディーの曲。
ミックとキースは、「ジャガー/リチャーズ」として数多くの楽曲を生み出した。ミックが初めてオリジナルを書いたのは1964年のことだといわれていて、ビートルズや他のオリジナル楽曲で活動するミュージシャンなどの影響により、オリジナル楽曲を中心に制作するようになっていった。
当時のストーンズにはオリジナル楽曲はまだなかったが、すでにビートルズの大きな成功を目の当たりにしていた彼らは、成功するにはオリジナル楽曲の必要性を迫られていた。
このため、マネージャーのアンドリュー・オールダムによって、キースとともにキッチンに閉じ込められるという信じられないようなエピソードもある。
この中でオリジナルといえるような楽曲が数曲できあがった。その中に「テル・ミー」や当時ミックの恋人であったマリアンヌ・フェイスフルに提供してヒットし、さらには自身たちでレコーディングし直してヒットとなった「アズ・ティアーズ・ゴー・バイ」などが含まれていた。その後、「サティスファクション」(1965)や「一人ぼっちの世界」、「黒くぬれ!」(1966)などの世界的なヒット曲を生み出していき、ジャガー/リチャーズはレノン=マッカートニーに並ぶ新しいソングライティング・チームとして成長していった。
また、1964年ごろからミック・ジャガーのステージ・アクションはジェームズ・ブラウンの影響を受けたという。