オリジナルメンバーは、リードギターでほとんどの曲の作詞作曲をしたトイ・コールドウェル、ベースで弟のトミー・コールドウェル、リズムギターで曲も書いたジョージ・マッコークル、フルート・サックスでこのバンドの味付けをしたジェリー・ユーバンクス、ドラムでジャズ畑のポール・リドル、ボーカルのダグ・グレイ。
ゆったりしたカントリーフレイバーあふれる大陸的な曲もあれば、タイトなリズムにあふれるハードなギターソロもある、ジャムセッションみたいな曲もあるという幅広いサウンドだ。ダグ・グレイの深みのある伸びやかな歌声はほかのバンドにはない印象を与えている。ユーバンクスのフルート・サックスもいい味付けになっている。
1975年のアルバム「Searchin' fora Rainbow」(ビルボード15位)から3曲。
日本盤のスリーブ。
「心地よいアメリカン・ロックを聴かせ、益々好調のマーシャル・タッカー・バンド快心の第4作。そのスケールの大きいサウンドは、サザン・バンドのなかでもひときわ光りを増す。」
MTBはこの時期から全国的な人気を得た。ゲスト参加にオールマン・ブラザースからディッキー・ベッツ(ギター)と「ジェシカ」でのピアノが絶賛されたチャック・リーヴェル(エレクトリック・ピアノ)、常連のチャーリー・ダニエルズ(フィドル)など。
「Fire on the Mountain」。作詞作曲ジョージ・マッコークル。
ビルボード38位とヒットした。マッコークルが友人のチャーリー・ダニエルズに提供しようとした曲だが、使われなかった。
ペダル・スティールはトイ・コールドウェル。マッコークルによれば、音程が外れているのは、トイが購入したばかりで正しいチューニングの方法を知らなかったためという。そうであっても、心地よいサウンドだ。
解説者の島田耕氏もそんなことは見破いていない。別の曲でジェリー・ガルシアのようなビギナーぶりと書いてはいる。また、ボーカルを含め全体をウエストコースト風に仕立てたという。
「Searchin' for a Rainbow」。作詞作曲トイ・コールドウェル。
ディッキー・ベッツはこの曲のみ参加で、2分20秒あたりからの美しくまろやかなギターソロを演奏。
「Virginia」(作詞作曲トイ・コールドウェル)
ドラマチックな曲調が印象的。
このほか、「Walkin' and Talkin'」は当時流行していたウエスタン・スウィングのサウンド。「Can't You See」は定評のあるライブ版。
1978年ごろに「Together Forever」に続けて購入。カントリー・ロックでもなく、カントリーでもなく、親しみやすいポップな曲調に、またまた感動したものだ。歌詞はいずれも、ゴールドラッシュ時代をテーマにしている。
ライナーノートは島田耕氏。
MTBは大衆的でポップな路線で南部の開放感にあふれたロック・サウンドをクリエイトし、レーナード・スキナードなどハードなサザン・ロック派と一線を画す。
MTBにはオールマンに欠けている、カントリー・フィーリング、カントリーの要素がある。
トイ・コールドウェルは「僕自身はもともとカントリー音楽の影響下にあったんだよ。だけど、ハード・カントリーとは違い、ロイ・エーカフなのさ。」と語っている。
トイとトミーの兄弟はかつてカントリー・バンドでもっぱらハンク・ウィリアムズなどを歌っていたが、それをやめてロックやR&Bに変えた理由はディスコティックの踊れる雰囲気に合わなかったからだという。