ウィリー・ネルソンWillie Nelson(1933年~)はカントリー系-のシンガーソングライター。国民的歌手。
1960年代後半から保守的なカントリー音楽であったナッシュビル・サウンドに対抗して、アウトロー・カントリーのジャンルを切り開き、1970年代前半からヒットが続き商業的な成功を得た。
基本はカントリーだが、ジャズ、ポップス、ブルース、ロック、フォークを加味した独特のサウンドが特徴。
テキサス州生まれ。生後まもなく母親が家を出、父親も再婚したために、のちに彼のバンドでピアノを担当することになる姉のボビーとともに祖父母に育てられる。6歳のときからギターを弾き始め、高校時代はバンドのボーカル・ギターを担当した。卒業後、8か月間空軍に入隊。1952年最初の結婚をする、1954年から地元の大学で農業を学び2年で中退。地元でDJになる、その後、母の住むポートランドへ向かい、バンクーバーでDJや音楽活動を続ける。その後、コロラド、ミズーリを経てテキサスに帰り、1年間セールスマンの仕事に就いた。
1958年家族とヒューストンへ移り、DJをしながら、のちにカントリーのスタンダードとなる楽曲を作曲し、売り込んだ。
1960年、ナッシュビルへ移り、徐々に作曲家として認められていった。1962年に初のアルバム「.And Then I Wrote」を発表。1965年、グラン・オール・オープリーに出演。
1972年、一時的に引退するつもりで、オースティンへ帰るが、ヒッピー音楽が盛んな町であっため音楽活動を再開する。
1973年、アウトロー・カントリー系のアルバム「ShotgunWillie」を発表する。
1975年、カバー曲の「Blue EyesCrying in the Rain」がビルボード21位、カントリーチャート1位とヒット。
1978年アルバム「Stardust」がヒット。収録曲の「Georgia on My Mind」がビルボード84位、カントリーチャート1位とヒット。
1980年代、「Midnight Rider」「On the Road Again」「Always on My Mind」がジャンルを超えてヒットした。
1985年、スーパーグループ「ハイウェイメン」を結成し、ウェイロン・ジェニングス、ジョニー・キャッシュ、クリス・クリストファーソンらと活動した。
1985年から農民を守るため「ファーム・エイド」をニール・ヤング、ジョン・メレンキャンプらと開催。
1990年、内国歳入庁から、収入が多かった1980年代初めの節税対策が否認されため3200万ドルの支払いを求められる。交渉により600万ドルに減額され、ネルソンの資産はオークションにかけられた。ネルソンは節税をすすめた会計事務所を訴え、和解した。1993年には内国歳入庁への支払いは済んだ。
1990年代以降、精力的にアルバムを発表、ツアーを敢行し、さまざなジャンルのミュージシャンと共演している。
ネルソンは4度結婚し、7人の子をもうけた。最初の結婚は1952年から62年まで。妻の暴力に悩まされた。ベッドシーツごと体をくるまれて、箒で叩かれたこともあった。2度目は共演した歌手だったが、別の女性に妊娠・出産させ、病院からの請求書を見つけられて離婚した。3度目はその女性と結婚した。1991年に現在の妻と結婚した。息子のルーカスはニール・ヤングのバックバンドでもあるカントリー・ロックバンド「Promise of the Real」のリーダーでリード・ボーカルとギターを担当している。
ネルソンはテキサスに牧場を持ち、ハワイのマウイ島でも暮らしている。1981年から何度も肺炎にかかり、タバコとマリファナのどちらかを選ぶように迫られると、マリファナを吸うほうを選んだ。1977年、1994年、2010年にテキサス州でマリファナ不法所持のため摘発されている。
子供のころ、コミックの影響で日本の柔術に関心を持ったが、1980年代からテコンドーを学び、段位を持っている。1990年代からは韓国武術のGongkwon Yusul(空拳柔術)を学び段位を持っている。
政治的にはリベラルで民主党支持である。
「On the Road Again」。1980年。ビルボード20位、カントリー部門1位。グラミー賞受賞曲。
作詞・作曲はウィリー・ネルソン。
地方巡業にあけくれるカントリー歌手の人生をテーマにした歌。ネルソンが主演した映画「HoneysuckleRose」の出演契約直後、帰途の飛行機のなかでプロデューサーからテーマ曲を要請されて、その場で作り、エチケット袋に書き留めた。曲のリズムはドラムのトレインビートをもとにしている。
「Always on My Mind」。1982年。ビルボード5位。年間22位。グラミー賞受賞。
作詞・作曲はジョニー・クリストファー、マーク・ジェイムズ、ウェイン・カーソン。
1969年、 B.J.トーマスが初録音。1972年ブレンダー・リーなどカントリー、ポップス部門でヒットする。
1972年エルビス・プレスリー版はビルボード20位。
1987年ペット・ショップ・ボーイズ版ビルボード4位。
「Georgia on My Mind」。1978年。
1930年ホーギー・カーマイケルとスチュアート・ゴレルが作詞・作曲し、カーマイケル楽団が録音。ジャズのスタンダード曲となる。
1960年、ジョージア州出身のレイ・チャールズがカバーし、11月にビルボード1位とヒットした。
1979年ジョージア州の州歌に制定される。
1978年ウィリー・ネルソンがカバー。アルバム「Stardust」に収録。ビルボード84位、カントリーチャート1位とヒット。グラミー賞受賞(カントリー・男性歌唱部門)。
「Midnight Rider」。1980年。
作詞・作曲はグレッグ・オールマンとロバート・ペイン。
1970年オールマン・ブラザーズ・バンドがシングルとして発表したが、チャートインせず。
1972年ジョー・コッカー版、ビルボード27位。
1973年グレッグ・オールマンのソロカバー版19位。
1980年ウィリー・ネルソン版、カントリー部門6位。
「On the Road Again」のヒットで知ったと記憶する。「Always on My Mind」も印象深い。この2曲でポップス史に残る。