フランス　リヨン郊外　三つ星レストラン「ポール・ボキューズ」本店

2012年6月17日（日）。リヨン市内の見学を終え、いったんホテルに帰った。20時からの夕食は、リヨン郊外にある三つ星レストラン「ポール・ボキューズ」の本店をネット経由で半月前に予約しておいた。
リヨンからソーヌ川に沿って北へ進み、コロンジュ・オ・モン・ドールまで10辧タクシー代は35€だった。19時50分過ぎに玄関へ到着。
辺りは道路に建物が点在する田園地帯で、ようやく暗くなりかけた建物に、西日が輝いていた。

オーナーシェフのポール・ボキューズ。客と記念写真を撮るのがお約束である。1926年2月11日生まれなので、この時は86歳。ポール・ボキューズの名はフランス料理、特に「ヌーヴェル・キュイジーヌ」の代名詞として40年近く前から知っている。今回の食事を予約するためネットで調べると彼が生きていると知って驚いたぐらいだ。西洋料理の料理人にとっては神的な存在である。神ではあるが、いつまで元気かは分からない。
ポール・ボキューズはこの地の料理人の家系に生まれた。第二次世界大戦後の1946年、リヨンの「ラ・メール・ブラジエ」（La Mère Brazier）で修行した後パリでもキャリアを積み、「ラ・ピラミッド」のフェルナン・ポワンに大きな影響を受けた。 1959年に生家のレストラン「ポール・ボキューズ」を継いで、1961年には国家最優秀職人章（MOF）を取得、1965年に得たミシュランの3つ星を40年以上維持している。
1970年代に、辻静雄の招きを受けて来日したとき、「吉兆」や「千花」などで、懐石料理・京料理の料理法や盛りつけに触発され、素材を活かす料理法を取り入れたり、盛りつける皿を料理ごとや季節ごとに変えたりするなど、地味だったフランス料理の盛りつけを根底から変えて新たなフランス料理の時代を作りあげたため、「ヌーヴェル・キュイジーヌ」の旗手とされた。現在は古典への回帰を説き、国際的な知名度とともに現代フランス料理界で特別な存在である。
客は欧米人がほとんどで、日本人の1グループがほかにいた。

アントレ。

V.G.E.に捧げるトリュフのスープ。Soupe aux truffes noires V.G.E. (plat créé pour l’Elysée en 1975)。この店の名物で、ほとんどの人が注文するという。確かに、これは美味かった。80€。
1975年にフランスの料理人として初めてレジオンドヌール勲章（シュバリエ級）を受勲したポール・ボキューズが、その際のエリゼ宮での晩餐会で、時の大統領ヴァレリー・ジスカール・デスタンに捧げた伝説のスープ。スープ鉢の上面に、懐石料理の「椀」のふたに見立てたパイをかぶせて焼き上げたもので、パイにナイフを入れた瞬間立ち上るトリュフの香りと、パイ自身の持つ芳香が絡みあうことで独特の効果を上げる。懐石料理をフランスで再現したものといえる。V.G.E.はジスカールデスタン大統領の頭文字。

川マスのクネル、ザリガニ添え。Quenelle de brochet aux écrevisses。昨日、リヨンの街角で食べたクネルよりは洗練された盛り付けである。兄が注文した。56€。

牛フィレ肉のロッシーニ Filet de boeuf Rossini。
美食家でもあった音楽の巨匠ロッシーニが愛した料理で、オーギュスト・エスコフィエの名著「料理の手引き」（1903年パリ刊）にも作り方が書かれているという。
私が注文した。56€。

アソート菓子。

コーヒー。

デザートのスイーツ。選択式。

デザートのスイーツ。選択式。これが近くに運ばれてきたとき、横にいた婦人が歓声を上げた。

デザートのスイーツ。

レストランの記念品室。

レストランの夜景。22時20分頃。2時間以上滞在して、ようやく外に出た。
アルコールは頼まなかったので、総額は二人で345€。ワインを飲んだら見当がつかない額になる。
帰りのタクシーの運転手は英語で話してくれたが、リヨンで毎年開催される国際シェフ・コンクールで、今年の日本人グループは悪い成績だったと、言っていた。グルメには関心を持つ人が多いと、改めて思った。
なお、翌日の夕食はリヨン市内の二つ星レストラン「ラ・メール・ブラジール」を予約しておいた。