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読書メモ 霧社事件に関する書籍 「霧社緋桜の狂い咲き」 「台湾・霧社に生きる」 「オビンの伝言」 「近代日本と台湾 霧社事件・植民地統治政策の研究」    

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「霧社緋桜の狂い咲き」ピホワリス(高永清)著、加藤実編訳。1988年。
 
ピホ・ワリスは霧社事件に遭遇し、日本側の通訳となった。その間のエピソードが紹介されている。1980年代に執筆されているので、日本の理蕃政策・山地支配の実態は批判的に分析している。
 
セデック族の歴史・民俗・人物についても紹介している。
「山地人は何故に人の首を切るのか。
山地人は豊かな平地に住んでいたが、鄭成功が数百万の漢民族を従えて平地に居住した。高砂族は恐怖感を感じて中央山脈の中に逃げ込んだ。山地人は漢民族と闘争をつづけ、時折り平地に出て漢民族の首を取って気を晴らした。そこから首取りの習慣が生まれた。」
 
井上伊之助公医や警察官など日本人についても記述している。
 
「台湾・霧社に生きる」柳本通彦、1996年。
取材ドキュメンタリー。バカンワリス。台湾に残った下山一(林光明)一家の苦難。オビン・タダオの半生。高砂義勇軍生存者からの聞き取り。日本人慰霊碑破壊の事情。
 
「オビンの伝言・タイヤルの森をゆるがせた台湾・霧社事件」
(中村ふじゑ、2000年)
筆者は1962年から1996年まで、オビン・タダオ(高彩雲)と交流した。花岡初子として霧社事件に遭遇したとき、川中島への強制移住、その後の生活の状況が詳しい。
 
「近代日本と台湾 霧社事件・植民地統治政策の研究」
(春山明哲、2008年)。
春山明哲は1946年東京生まれ。父は台湾高雄の漢民族で母は日本人。東大大学院応用化学卒。国立国会図書館に1974年から2007年まで勤務。日本台湾学会理事長。台湾史。近代日本政治史。植民地統治政策史。
 
昭和政治史における霧社事件。霧社事件に対する日本政界への反響。首相浜口雄幸が114日に銃撃される。貴族院の政治的圧力。
軍事関係資料の研究。毒ガスは使われたか。
井上伊之助の山地原住民伝道。
原敬。漸進的内地延長主義。
後藤新平。台湾統治政策の方針が違う。特別統治主義。
台湾統治法令の明治憲法上の位置づけが政治問題化。
岡松参太郎。旧慣と法の研究。
後藤新平伝。鶴見裕輔。
霧社紀行。20079月。眉原の下山誠(林致誠)家と下山家の墓・饅頭石。川中島(清流)。オビン・タダオの墓。霧社周辺の戦跡。廬山温泉。埔里。




感想


日本の植民地化の台湾の歴史への功罪は相半ばする。近代的インフラや李登輝らを育てた教育には一定の意義があろう。しかし、一方的に賛美することはできない。樟脳や木材産業興隆には土地収奪という暗部があった。


山地の原住民たちは、日本の占領後に軍事的に制圧され、社会・文化様式が強制的に変容された。


民族自決主義の観点からすると、明治以降の日本は幕末の攘夷から変換し、自主的に西洋文明を受け入れた稀な国家であった。


中国・朝鮮や台湾原住民は自主的にはできなかった。原住民たちも、現代社会においては、まさか狩猟文化のまま生きていくことはできないだろう。


伝統文化を保ちながら、インターネットなどの文明と共存するほかはない。


その伝統文化や国家政策は他の民族や国家の脅威にならないことが前提で、人類全体の幸福化につながることが必要である。







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