川西市郷土館。旧平賀邸。国登録有形文化財。兵庫県川西市下財町。
平成26年6月4日(水)。
旧平賀家住宅は、日本最初の工学博士平賀義美が大正7年に猪名川沿いの川西市小戸に建設した、イギリスの田園住宅の形式を極めて良く遵守した住宅である。
設計は大林組の建築部長であった松本兎象、施工は鴻池組が行った。松本兎象は東京高等工業学校を卒業し、代表作に曾根崎新地歌舞練場などがある。
洋館は平屋建(実験研究棟は2階建)で、延べ床面積は約200㎡(実験研究棟含む)。天然スレート葺の屋根に玉砂利洗い出しの外壁、基礎は御影石積みである。出窓と煙突がアクセントとなっている。また、二重窓など合理的な設備と的確な装飾で引きしめるなど、端正で洗練された意匠で統一されている。
平成2年に移築された。背後は実験研究棟で、そのほか旧邸内にあった東屋・門・橋・胸像なども移築復元された。
大正期の住宅の典型として、日本の近代建築史上重要な建物といえる。ひょうご近代住宅100選。
旧平賀邸。平賀義美博士の銅像。平賀博士は、1857(安政4)年福岡に生まれ、東京帝国大学を卒業後、イギリスで染色技術を学び、帰国後は最新の織物・染色技術の指導を行う。また、織物業界だけでなく、関西の幅広い企業のブレーン役を果たし、その発展に寄与した。日本晟初の工学博士で、化字者であった。イギリス等欧米に外遊7回を重ねている。
手前に、映画「繕い裁つ人」主演中谷美紀の記念植樹がある。平成26年9月29日から始まるNHKの朝ドラ「マッサン」のロケ地にもなり、7月に収録された。
旧平賀邸。中央は客間。左がサンルーム。右が玄関。イギリスの田園邸宅の庭のように花が咲いている。
旧平賀邸。玄関ロビー。室内に入ると、床は板張り、壁は腰板の上部がクロス貼り、天丼は漆喰塗りである。華美な装飾はないが窓の上部に設けられているステンドグラスが洒落ている。
旧平賀邸。玄関ロビー。ステンドグラス。小川三知の作品という。
旧平賀邸。客間。内部は、客間・書斎・寝室等の部屋が配され、出窓・暖炉が付けられ、イギリス流の形式を忠実に守っている。
客間にも暖炉がある。天丼にはごく簡素で上品な漆喰のモールディングが施されている。主な窓は二重であり、窓台部分が手前に取り外せ、腰壁の中に網戸が収納されている。
また各部屋はスチーム暖房が取り入れられていた。
旧平賀邸。客間。壁紙はウィリアム・モリスのデザイン。
ウィリアム・モリスのデザインのよく似たネクタイを1980年代後半にNYのメトロポリタン美術館で購入した。そのネクタイはカラフルだが、ここの壁紙は単色という違いがある。
旧平賀邸。書斎。暖炉と、その上部の寄木細工が見事である。
旧平賀邸。書斎。入口のステンドグラス。
旧平賀邸。書斎。天井のシーリング・ファン。
旧平賀邸。本邸から実験研究棟への階段渡り廊下。変わった構造をしている。
旧平賀邸。実験研究棟。
2階の展示。本館書斎の旧観写真と思われる。実験研究棟は廊下のような幅の狭い建物である。旧平賀邸。外観。本館から実験研究棟への階段渡り廊下部分。
旧平賀邸。実験研究棟横の通路を旧平安邸へ戻る研修中の中学生たちと職員。
現代建築である美術館のミューゼレスポアールで絵画を鑑賞して、川西市郷土館を退出。
源満仲関連史跡である多田院の多田神社方面へ移動。