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読書メモ。「ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか」。投擲具。ホモ・サピエンス。ネアンデルタール人。

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「ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか」NHKスペシャル取材班。2012.角川書店。
2章 投げる人・グレートジャーニーの果てに ~飛び道具というパンドラの箱~。 大坪太郎。
  
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オーストラリア。ケアンズ。ジャプカイ・アボリジナル・カルチュラルパーク。
 
ジョン・シェイ博士。ストーニー・ブルック大学。イスラエル・カルメル山で調査。石器造りが認められて、ハーバード大学大学院へ。
 
レバントの洞窟。20年前アフリカで生まれた先発のホモ・サピエンスの人骨は115千年前から75千年前。同時期・同地域にネアンデルタール人と暮らす。ホモ・サピエンスは74千年前に姿を消す。ネアンデルタール人は45千年前に姿を消す。
後発のホモ・サピエンスは4万年前から1万年前まで暮らす。
 
3つの石器。先発のホモ・サピエンスとネアンデルタール人の石器は同じ。手持ちの槍で大型動物を狩る。
後発のホモ・サピエンスの石器は細長い形をした石刃。ヨーロッパ、アジア、アメリカ大陸のホモ・サピエンス使用の石刃と同型。動きの素早い小型動物の狩猟に優位。
後発組の秘策・人類初の飛び道具。投擲具の使用
 
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スイス。ヌーシャテル。ラテニウム博物館。投擲具。松の木の柄にトナカイの角のフックを付けている。槍の根元には鳥の羽を付けているので、矢ともいえる。旧石器時代末期マグダレーヌ文化。
 
投擲具の出土。ヨーロッパフランス南西部アキテーヌ地方。19千年前。トナカイの角製。
オーストラリア5万年前にホモ・サピエンスが到達。アボリジニは数十年前まで投擲具ウーメラを狩猟に使用。数万年前の岩絵に描かれる。
アジアは空白地帯。アメリカ大陸14千年前に到達。ネイティブ・アメリカンが投擲具アトラトルを数百年前まで使用。アリゾナ州で発見された4000年前のものがNY自然史博物館にある。
飛び道具は9万年前以降アフリカでその起源の尖頭器が見つかる
 
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スイス。ヌーシャテル。ラテニウム博物館。投擲具。スピア・スローアー。トナカイを狩猟する想像図。マグダレーヌ文化は
17千年から12千年前とされる。アボリジニとヨーロッパ人の分化時期を考えると、25千年前頃には現生人類(クロマニヨン人)が普遍的に使用していた道具と思われる。
 
投擲具。長さ40㎝の木の棒、先端にフック。小型動物を狙う。フックに槍を引っかけて飛ばせば、梃子の作用で、遠くまで素早く飛ばすことができる。
 
投擲具。12千前にアフリカ、ヨーロッパ、アジアなどで弓矢が使われはじめ、投擲具は姿を消した。北アメリカから中央アメリカでは長く使われた。アステカ帝国を征服しようとしたスペイン人は、鉄の鎧も貫くその威力に度肝を抜かれた。
 
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メキシコ・シティ。クイクイルコ遺跡。付設博物館。
 
オーストラリアのアボリジニ。6万年前にアフリカを出て、インド、東南アジア、インドネシアを経て、5万年前に到達。
 
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ダーウィン近郊。カカドゥ国立公園。壁画。カンガルーの狩猟と思われる。男性が右腕を使って槍を投げようとしている器具が投擲具(スピアスロアー)である。
 
制裁用の投擲具。ダーウィン近郊のアーネムランド。狩猟用のほかに制裁用。返しのついた槍。獲物の横取り、精霊を冒涜、集団の仲間を罰する。人類の普遍的な行動の一つ。
人類は集団で協力して生き伸びた。義務や縛りを放棄し、利益だけをせしめるフリーライダーは集団の存続を脅かす存在。その対策の大きな柱が、投擲具による制裁。
人間は仲間の評判を気にする。力の強いフリーライダーを飛び道具で制裁。
 
ダンバー数。ヒト一人が認識できる他人の数は150人。集団の単位。狩猟採集民の1ユニットは3050人。普段の生活は別々だが、時折集まって祭りや儀式を行う「氏族(クラン)」の単位は平均150人。
 
集団サイズの拡大。オハイオ州。イロコイ族・ショーニー族などネイティブ・アメリカンの故地。
ポール・ビンガム博士。およそ10万年前にホモ・サピエンスが投擲具を使い始める。
ホープウェル。半径200mほどの円形の広場。外を取り巻く土塁の内側に堀が廻らされている。コロラド州を中心としたアメリカ中西部で栄えた、BC200から500年頃のホープウェル文化の最大の特徴が円形広場。

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10003000人の集団が、季節ごとに集まり、物々交換や情報交換、宗教儀礼や結婚相手を捜すための集会場。
集団の中に犯罪者が混じる。それを監視し、治安を維持するために投擲具アトラトルが使われた。土塁と中央のマウンドに治安官が配置された。アトラトルの射程距離は100m。広場全体が射程範囲内。
飛び道具を使う前は、協力できる集団のネットワークは150人程度だったが、飛び道具を治安維持に使うようになって、数千人の規模の集団の維持ができるようになった。
 
フランス。アキテーヌ地方のラスコーなどの洞窟。42千年前にヨーロッパへ進出したホモ・サピエンス。32万年前の氷期の影響でヨーロッパ北部などから移住し、フランス南西部・南部、スペイン北部の人口が24千人に倍増。集団のサイズが大きくなり新しい芸術や文化を生んだ。
 
レ・ゼジイの国立フランス先史博物館。現存最古の投擲具。19千~17千年前。シカの骨製。雄牛・雌牛が彫刻された投擲具。
 
人を攻撃する道具としての投擲具。至近距離よりも遠距離のほうが殺人しやすいという心理的基盤は石器時代から現代まで続く。
 
ワシントンDCの国立自然史博物館。イラクの遺跡から発掘されたネアンデルタール人の人骨。投擲具から受けた傷5万年前なら、後発のホモ・サピエンスと同時期。
フランス南西部の遺跡のネアンデルタール人。ホモ・サピエンスに食べられた形跡
 
ホモ・サピエンスがネアンデルタール人との競争に勝った理由は社会構造の差という説。ホモ・サピエンスの集団は大きく、出土する道具や石器の分布から集団同士も広いネットワークを持っていたことを示し、アイデアを共有して危機に対応できた。
 
スペイン東部の岩絵。9千年前の岩絵。7・8人ほどの集団が弓矢を持って向き合っている。
 
人類はほかの人たちの共感を覚えるので、平気で障害物や獲物として扱えない。しかし、共感性は有史・先史を問わず人々がしてきた残虐なふるまいの妨げにならなかった。人々が認識する道徳の輪が、氏族や村や部族のメンバーだけを含み、すべての人類を含んでいない場合がある。
人間には他人に共感する心と他人を罰したいと思う心があり、どちらにでも揺れ動く。飛び道具は相手を傷つけるのをためらうという心のメカニズムが発動されにくい。内集団には身びいきだが、外集団には共感しにくいため、暴力の連鎖が生まれる
 
現代でも飛び道具(武器)は、社会的協力の維持にかかせない道具であり続けている。
 

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