特別史跡「岩橋千塚古墳群」。ジオラマ。紀伊風土記の丘資料館。
平成27年11月6日(金)。和歌山市。
岩橋(いわせ)千塚古墳群は、紀ノ川下流の南側、JR和歌山駅東方約2kmの丘陵地(標高20~150m)を中心に分布する古墳群で、その範囲は、花山地区・大谷山地区・大日山地区・岩橋前山地区・井辺前山地区・井辺地区・寺内地区などおよそ3キロ四方に広がり、北に紀ノ川、西は日前宮を中心とした岡崎平野に面している。
紀伊風土記の丘は、特別史跡「岩橋千塚古墳群」の保全と公開を目的として1971年に開館した。この古墳群は、5世紀から7世紀前半にかけて築造された前方後円墳、円墳、方墳など約850基が集まっており、その古墳の数の多さは全国でも最大クラスといわれている。
風土記の丘園内は約65haの広さがあり、標高150mの丘陵からその北斜面、ふもとまで430基以上の古墳が点在しているが、主に大日山地区・岩橋前山地区の部分である。
ジオラマの平地中央に駐車場があり、遊歩道を左に歩くと、資料館がある。その上部が前山A地区、その右頂上部に前山B地区があり、右へ将軍塚古墳(墳長42.5m)、知事塚古墳(墳長34.5m)、郡長塚古墳(墳長30.5m)と前方後円墳が続き、やや離れた右中央の大日山に、紀伊国最大級の前方後円墳である大日山35号墳(墳長約86m)があり、周回して見学ができる。
大日山の右手前が大谷山で大谷山22号墳(墳長約70m)も首長クラスの前方後円墳である。
なお、ジオラマにはないが、岩橋千塚古墳群東部の天王塚山古墳が墳長88mで、県内最大の前方後円墳であることが最近分かった。
和歌山平野の古墳時代の地形と遺跡。大谷古墳現地説明板より。拡大可。
和歌山平野の古墳の被葬者は紀氏集団とされる。紀氏集団は複数の有力家系で構成され、3世紀後半から5世紀初頭の首長系譜は同一とみられる。紀氏集団は4世紀以降、紀ノ川南岸地域、北岸地域、中流地域、河口部・沿岸地域、淡輪地域にいくつかの集団が存在し、同盟を結んで紀氏集団を形成していた。
盟主は南岸、北岸、南岸と勢力が交代した。4世紀後半には倭王権と結んだ。
和歌山平野での最初期の古墳は紀ノ川南岸の岩橋千塚古墳群北部の花山8号墳、花山44号墳で4世紀後半とされる。
紀ノ川北岸では5世紀前半に車駕ノ古址古墳、続いて大谷古墳が築造された。北岸勢力は大伴氏と結びついたが、6世紀前半の朝鮮政策の失敗による大伴氏失脚に連動して勢力を失い、主要部分は大和の平群へ移住し、中央貴族の紀朝臣となる。
勝者の南岸勢力は倭王権と結びつき、紀国造に任じられ、在地の支配権を確保した。岩橋千塚古墳群のうち首長墓とみられる大日山35号墳、大谷山22号墳、天王塚山古墳はいずれも6世紀半ばの築造と考えられている。という説が妥当であろう。
岩橋千塚古墳。
岩橋型横穴式石室。
それぞれの古墳の埋葬施設は、結晶片岩の板石を積んで長方形の空間を造った竪穴式石室、横穴式石室などがある。石室を設けず板石を立ててつくる箱式石棺、また木棺を分厚く粘土で包んだ粘土槨なども見られる。
なかでも横穴式石室に見られる石棚と石梁(いしはり)は、岩橋千塚古墳群の最も大きな特徴で、とくに石梁は、割り石を積み上げただけの石室の壁面を崩れにくくするために支える「構造材」の機能があると考えられている。そのため将軍塚などは天井の高さ約4.3メートルの大きな玄室を確保することができたと考えられる。また、床の下には排水施設があり、水が外に抜けるような構造になっている。
大日山35号墳。
大日山35号墳。
大日山35号墳。西造出出土、両面人物埴輪。
大
日山35号墳。東造出出土、牛形埴輪、猪形埴輪。
大日山35号墳。東造出出土、水鳥形埴輪。
大日山35号墳。西造出出土、馬形埴輪。
大日山35号墳。東造出出土、翼を広げた鳥形埴輪。
円筒状の台部の上に球形の体部が載り、その体部両側に(接合したのは片方のみ)25㎝程度の翼が、短い頸部と球形の頭部が前方へ傾斜した状態で接合し、飛んでいるないしは、飛ぼうとしている姿態を表現することが判明した。
鳥形埴輪には立体的に翼を表現するものは確認されているが、翼を広げて飛んでいる滑空の状態を写した鳥形埴輪は確認されておらず、現段階では全国唯一の例となる。
馬具 雲珠。岩橋千塚古墳群。井辺前山6号墳。古墳時代後期。
馬具 杏葉。岩橋千塚古墳群。井辺前山6号墳。古墳時代後期。
鍛冶道具。
鉄製 鉗。鉄製 槌。鉄製 鑿(のみ)。岩橋千塚古墳群。大日山70号墳。
砥石。岩橋千塚古墳群。大日山71号墳。
金環・銅環(耳飾り)。岩橋千塚古墳群。井辺前山6号墳。
金環(耳飾り)。岩橋千塚古墳群。大谷山27号墳。
首飾り(ガラス製管玉・小玉、滑石製臼玉)。岩橋千塚古墳群。前山B220号墳。
瑪瑙製勾玉。碧玉製勾玉・管玉。箕島2号墳。有田市。古墳時代。
環頭太刀 金銅製柄頭。(単鳳式柄頭)。鳴滝1号墳。和歌山市。古墳時代後期。
子持勾玉。鳴滝1号墳。和歌山市。古墳時代後期。
資料館を見学後、周遊路を登って古墳の見学を開始した。