平成27年11月9日（月）。和歌山県海南市。
藤白神社から熊野古道の藤白坂を登り、御所の芝まで往復した。登山靴に履き替えて、藤白神社の駐車場を12時10分頃出発し、ときおり小雨に振られながら13時40分頃に帰着した。
藤白神社から歩くと、3分ほどで藤白坂の登り口にある有馬皇子の墓に着く。墓碑といっても石柱のみで、後日見学した御坊市の岩内1号墳が有間皇子の墓と推定されている。この地は斉明4（658）年11月11日に皇位継承争いの陰謀により有間皇子が絞殺された場所である。
有間皇子は舒明12(640)年に孝徳天皇と妃の小足媛(阿倍倉梯麻呂の娘)の皇子として生まれた。大化元(645)年孝徳天皇が即位すると、皇位継承の可能性が生まれた。しかし皇太子である中大兄皇子（のちの天智天皇）が政治の実権を握り、同5年外祖父の左大臣倉梯麻呂も死去し、父も中大兄皇子と不和となって白雉5(654)年死去すると、有間皇子の立場は危ういものとなった。
有間皇子は危険を察知し、斉明3(657)年9月、狂気を装い療養と称して牟婁温湯(白浜町の湯崎温泉)へ行き、帰京後この地の風光をほめて斉明天皇に推奨した。同4年10月天皇一行は同所に行幸、その留守中に有間皇子の謀反事件が起こった。
11月3日蘇我赤兄が皇子に、天皇の失政3カ条をあげて謀反を勧めた。皇子は挙兵に応じたが、5日夜、赤兄は皇子の家を囲み、天皇に皇子の謀反を報告した。9日皇子と4人の側近は牟婁温湯に送られ、中大兄皇子が尋問した。11日有間皇子は京へ護送される途中、藤白坂で絞首刑に処された。この事件には、のちの天智天皇時代に左大臣となった蘇我赤兄の陰謀説と中大兄皇子との共謀説がある。
墓碑と並んで、歌人・国文学者であった佐々木信綱の筆による、有間皇子が詠み万葉集に所載された歌「家(いへ)にあれば 笥(け)に盛る飯(いひ)を 草枕 旅にしあれば 椎(しひ)の葉に盛る」の歌碑がある。
万葉集に「藤白の み坂を越ゆと 白妙(しろたへ)の わが衣手(ころもで)は 濡れにけるかも」という歌がある。この歌は、皇子が藤白坂で処刑されて43年後の大宝元年（701）、持統上皇・文武天皇の牟婁の温湯行幸に従った大宮人の歌である。時代が変わって、皇子への同情と追慕が公然と表出できるようになり、19歳という若さで悲運に倒れたのを惜しんで、こうした歌が多く歌われた。坂に「み」と付けたのは、華やかな歴史の舞台から突き落とされ、非業の死を遂げた皇子の霊が、熊野への入口という重要な位置を占める藤白坂の道の神としての存在となり、この種の歌を手向けて通らねばならなかったことを意味するという。
有間皇子の墓の近くにある。江戸時代中期の地蔵石仏。
左の山道を登る。帰りに左から自動車が出てきて驚いた。傾斜はきつい。藤原定家の嘆きが分かる。
苔むした石や簡易舗装の道。イノシシが土を掘り返した跡も随所にみられる。
工場などが多い。
海南港方面への眺望。
平安時代の宮廷絵師巨勢金岡が、熊野権現の化身の童子との絵競べに負けたのを恥じ、松の根元に絵筆を捨てたという伝承がある。
山腹・谷沿いの坂道を登ると標高約260ｍ藤白峠に着き、地蔵峰寺と集落の一角に出る。
正面側柱に永正10（1513）年の銘がある。方３間、寄棟造、本瓦葺。禅宗様の影響が濃い。
地蔵峰寺近くにある。
御所の芝への案内にしたがい、海沿いの道を登る。
和歌山市方面、和泉山地方面への眺望がある。淡路島・四国まで見渡せるという。古来から、眺望絶景、熊野路第一の美景なりと称された。
和歌山の朝日・夕日百選に選定されている。
13時40分頃、藤白神社の駐車場に戻り、大野城跡へのアクセスをネットで検索する。