儀礼用の杖。シカン文化。AD9~13世紀。ラファエル・ラルコ・エレーラ博物館。
2015年6月20日(土)。
銀箔で覆われた木製の儀礼用杖。
古代アンデスでは、世界の他の地域と同様、儀礼用の杖は権威・権力の象徴だった。
アンデスの儀礼用の杖は貴金属製のものが多い。また、木製の杖やポーラを銀箔・金箔・金メッキ銅などで覆った例もある。板金で被覆する技術は軽量でありながら金や銀の輝きを持たせることを可能にした。
チャビンの埋葬用品。BC13世紀半~AD1世紀。
縁にS字型の文様を持つ円形の黄金製胸当て。
黄金の冠には、ネコ科動物(牙)、鳥(爪)、ヘビ(髪とベルト)の特徴を備えた人の姿が表されている。これは3つの世界(天上界・神の世界、地上世界、地下・死者の世界)の権力を有する超自然的な存在を表現している。
これらの作品には、アンデス北部で冶金技術の発展が開始された形成期における冶金技術者らの技量と才能が表れている。
ミイラ包疑頭。チャンカイ文化。AD14~16世紀初頭。
このミイラ包疑頭は、ラルコ博物館が20世紀半ばに取得したものであり、その後の発掘によって出土したチャンカイ文化の巨大なミイラ包み群であると推測される。
このような疑頭は、アシその他の繊維や布などの素材を、染色あるいは金属で装飾したもので、一部のミイラ包みに用いられた。
疑頭は死者の所属していた社会集団の先祖の顔を作ることを目的とし、死者が共同体の祖先へと変化するプロセスを促した。
葬儀用の仮面。AD1~13世紀。
アイ・アパエック神が表現された銅製葬儀用仮面。モチェ文化。
銅・金合金製葬儀用仮面。(ワリ文化)。
葬儀用の仮面は、古代アンデス社会の指導者の埋葬において重要な役目を担っていた。仮面は死者のアイデンティの重要な象徴であり、死者は仮面に表現された人物に変化した。
仮面には、貝の象嵌や辰砂(硫化水銀)の赤い塗料などで装飾が施されているものもある。
金製首輪、腕輪、ベルト、指輪。AD1~1532。
金と銀は互いに補うものとされた。金と銀の色と輝きは双性を象徴した。金は太陽、昼、男性を表し、銀は月、夜、女性を表した。
杖の頭部。モチェ文化。AD1~8世紀。
銅製の杖の頭部。アンデスの宇宙観における重要な二つ動物である鹿とフクロウが表現されている。
鹿はモチェ文化の貴人たちの狩りの対象だった。貴族とその権力はネコ科動物に象徴されている。
空を飛び、夜に狩りをするフクロウは、天上の神の世界と地下の世界を結ぶ神の化身であると考えられていた。
穿孔頭蓋骨。変形頭蓋骨。
銅製ナイフ。成人女性の頭蓋骨。頭頂部左側の穿孔は再生した形跡がない。
成人男性の頭蓋骨。顔面および頭部には骨折が治癒した跡が多数存在している。これらの骨折は鈍器による個人戦によって発生したものである。頭頂部右側の頭蓋穿孔が再生していることから、この男性は穿孔手術後にも生き長らえたことが分かる。
頭蓋骨の穿孔手術は、古代アンデスの様々な社会において行われていた。
頭蓋骨穿孔は、儀礼の戦いや戦闘のさいに起こった内出血、骨折した頭蓋骨の破損部分を取り除くための外科手術だったほか、頭痛を和らげるために行われることもあった。
穿孔手術には、黒曜石のナイフや金属製ナイフ(銅あるいは銅合金)が使用された。
独特の形に変形された頭蓋骨は社会的身分を示していた。
ミニチュアの葬儀用品。チムー文化。AD14~16世紀初頭。
鐙形土器、碗、壺、ケロや儀礼用のナイフ、毛抜き、耳飾り、指輪などの儀礼用の器のほか、針や紡錘車(回転軸、紡輪)などの織物用具一式も表されている。
これらの葬儀用品は、チャンチャンに埋葬された若く高貴な女性の墓から出土したものと考えられ、繊細な装飾を施した銀の箱に納められていた。
箱の装飾は、先祖あるいは神と考えられる人物を中心に、横向きの人物二人が並ぶ様子を表している。この人物像は墓または葬儀場を示す階段文様に囲まれたスペースの中に描かれている。