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ペルー リマ ラファエル・ラルコ・エレーラ博物館 その8 モチェ文化における儀礼の戦いと生贄

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銅のガラガラ。モチェ文化。AD1世紀~8世紀。
ラファエル・ラルコ・エレーラ博物館。2015620()
モチェ芸術では、様々な楽器が詳しく表現されている。楽器は、主に戦闘の儀礼や死者の踊りなどの登場している。特に舞踏の場面では、深く乾いた音によって、劇的な音響効果を作り出すガラガラの使用が際立っている。
これらのガラガラは、戦闘準備の儀礼に参加した人々の墓から発見されたもので、本来は、儀礼の戦いと生贄に関連する赤銅色をしていた。
これらの楽器には、タコ、アネモネ、フクロウなど神話上の存在の顔が表現されている。
 
モチェ文化における儀礼の戦いと生贄。

歴史の流れの中で、宗教は社会に共通の信仰を広めることによって宇宙の秩序を保ち、自然現象にプラスの変化を起こそうとした。
他の古代アンデス文化と同様、自然の威力を礼賛していたモチェ文化では、世界の秩序を維持し、エル・ニーニョなどの天災を防ぐには、人身御供が必要であると考えられていた。
モチェ芸術の図像研究を通じて、最も重要な儀式は儀礼の戦いで始まり、敗者が生贄となって終了したことが理解される。
儀礼の戦いでは、戦いの儀礼的側面を示す上質の衣裳や装飾品を身に着けた戦士が対戦した。戦いの特徴は格闘戦であること、また相手を殺すことでなく兜を奪うことである。また、戦いの目的は、生贄の犠牲者を確保することにあった。
生贄となる敗者は衣服を奪われ、縛られた後に生贄の場所まで行進した。捕虜は裸でさらされたが、力強く性的能力も保持した状態であった。
神殿において、神官や女官らが儀礼における生贄の準備を行った。死刑の方法は様々であったが、少なくとも1名は出血によって死亡した。
生贄の血は、至上の神々を満足させ、あるいは静めるための捧げ物とされた。
 
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腰当て。モチェ文化。
合金製腰当て(金・銅および銀・銅)。銅製腰当て(金・銅合金ガラガラ)。
モチェ文化の戦士たちは、腰部分に装身具を身に着けていた。モチェ文化の図像では、この装身具が尾てい骨付近を覆うように表されていることから、「尾てい骨防具」ともよばれている。
腰当ては、儀礼用ナイフの形に類似して鋭利であり、使用跡があることから、実際にナイフとしても利用された可能性がある。
 
装身具の上部は、ガラガラになっており、生贄や豊穣の儀礼に関係の深い果実であるウユチュが表現されている。
 
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ポーラ(棍棒状武器)。北海岸。
BC13世紀半~AD8世紀。
ポーラは、古代アンデスの戦闘や儀礼において最も多く使用された鈍器であった。
ポーラの持ち手部分は木製である。一方、頭部は木製・石・金属製の場合もあり、形状も円盤、歯輪、星型と様々で、中にはサボテンや擬人化された動植物の頭部を表すものもある。
 
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儀式用ラッパ、オカリナ。北海岸。
AD1世紀~16世紀前半。
ほら貝を吹く人物の土器(モチェ文化)。ほら貝の儀式用ラッパ(モチェ文化)。土器の儀式用ラッパ(モチェ文化)。銅と金の合金製ミニチュアほら貝。銅製オカリナあるいは笛(チムー文化)。海貝のオカリナ。
アンデスにおいて、ほら貝は儀式用のラッパとして使用されていた。ほら貝は温暖な海に生息する貝であり、水の循環に関係していると考えられた。海の水は雨となって大地に戻り、大地は川や用水路によって灌漑され、再び緑に覆われる。深く強い音をもつほら貝は、水に関連する儀式において吹奏された。
ほら貝は、様々な恵みを与える神々に対する感謝を捧げるための重要な供え物でもあった。形成期以降の重要な神殿において、供え物として納められたほら貝が発見されている。また、古代アンデスでは、ほら貝に形を似せた土器のラッパも作られていた。
 
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儀式用ナイフ、モチェ文化。
銅製のガラガラ付きナイフ。ガラガラの各面に生贄の儀式の場面が描かれている。
 
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斬首の神々。モチェ文化。
モチェの芸術では、神々がほかの神や超自然の存在、人間と戦う様子が表されている。戦いの最後には、敗者の斬首が行われた。神々は半月状の刃を持つナイフ「トゥミ」とともに表現されている。
 
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その他の生贄。モチェ文化。
モチカ芸術に見られる敗者の生贄の様子。生贄の儀式は時に沖合いの島で行われたことから、敗者はバルサとよばれる舟で運ばれた。
一方、山における儀式では生贄は断崖から突き落とされた。
 
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土器。ネコ科動物に象徴される戦勝者が、負けた戦士に襲いかかる場面を表現している。
 
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土器。ネコ科動物の二つの頭部を伴うヘビ。
 
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土器。戦いの終わりと敗者の行列。モチェ文化。
もちぇの戦士たちは、ポーラ(棍棒)と楯を使って戦った。一対一の勝負は、海岸地帯の砂漠など広い場所を舞台としたようである。
勝負では、相手の兜を取り、髪を掴んだ側が勝者となった、敗者は装身具を奪われ、武器や衣装とともに縛られた。
勝負は敗者の首に巻いた縄を引いて、生贄の儀式へと向かった。
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石箱。儀礼の戦い。モチェ文化。
トルコ石を嵌め込んだ石箱。儀礼の戦いや敗者の行列が描かれている。
 
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ポーラ(棍棒)。モチェ文化。
儀礼の戦いで使用された。ビルー谷ワンカコ遺跡にて出土。
 
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戦士たち。モチェ文化。
儀礼の戦いに備える戦士の様子。社会的身分の高さを示す頭飾りや羽根飾り、耳輪、胸当て、首飾り、腕輪、装飾付き上着、腰当てなどを身に着けたほか、顏に化粧を施し、ガラガラなどの楽器を携えた。さらに、楯、ポーラ(棍棒)、槍、投槍器などで武装した。
 
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土器。ラルコ博物館を代表する土器。モチェ文化。
生贄の儀式。敗者の血を注いだ器がモチェの代表的な神々に捧げられている。
 
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土器。鳥の戦士。モチェ文化。
モチェ芸術における鳥の戦士に見られるように、翼の生えた軍装の神はアンデスの信仰世界にも古くから存在していた。
 
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土器。断崖から突き落とされる生贄。モチェ文化。
生贄は神の目の前で山頂から突き落とされた。

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