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ペルー リマ ラファエル・ラルコ・エレーラ博物館 その9 古代アンデスの織物

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古代アンデスの織物制作風景図。
ラファエル・ラルコ・エレーラ博物館。2015620()

古代アンデスの織物。
「インカ王パチャクテックは、王子あるいは王の子女以外の人々が金・銀・貴金属・多彩色の羽毛を身に着け、ピクーニャ製の衣服をまとうことを禁じた。」(ガルシア・デラ・ベガ)。

古代アンデス社会において、織物は金や銀と同等の価値を持っていた。織物は衣装として機能しただけでなく、ミイラ包みとして、宗教的思想やメッセージを死後の世界へ伝達する手段としても用いられた。また、為政者に対する献上品とされたほか、社会的身分を区別する手段としても利用された。

アンデスにおいて、綿の栽培は約4500年前に始まった。綿は、紡績や染織、網や袋の製造から、死体包みや上質な衣装の生産に至るまで、アンデスの人々が利用した主要な繊維の一つである。
綿と同様に織られたのがアルパカやピクーニャなどの毛糸で、極細で防寒性に優れ、高い撥水性を有している。

古代アンデスでは、紡績や染織を担うのは主に女性であった。女性たちは紡ぎ、染め、織り、刺繍の技術を身に付けていた。
織物にはデザインだけでなく仕立ての構造にも多くの情報が込められていた。アンデス南海岸では、砂漠気候が幸いして古代の織物が良好な保存状態を維持できたことから、同地方の織物は特に有名である。アンデス北部の染織も非常に上質であったが、エルニーニョ現象による降雨や湿度に耐えることができなかった。
 
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墓の副葬品として発見された古代アンデスの紡績、製織の材料や道具。

染織の技術

古代アンデスの紡績や製織の主な材料は、木綿およびアルパカ、ピクーニャなどの獣毛であった。これら素材の、白から茶にいたる豊かな自然色が使用されたとともに、鉱物、動植物染料による染色も行われた。

紡績には、ビルーロとよばれる紡錘環をはめた紡錘(つむ)が用いられた。その環が紡錘の回転力を高め、糸の撚りを強める役割を果たしている。紡ぐさい、指先に滑りを良くするための粉を使用した。
出来上がった糸は紡錘から外して綛(かせ)にしたのち染色された。製織にはこのようにして作られた球状の糸玉や綛が使われた。

製織には、腰機(こしばた)や水平機などが用いられ、緯(よこ)糸を経(たて)糸の間に通す杼(ひ)も使われた。
織り手はヘラを手前に強く打ちこんで布地を仕立てたほか、糸を整えるための櫛状の道具も用いられた。布の縫い合わせや刺繍には細い針が使用された。

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チンチャ文化の織物。
AD13世紀から1532年。
木綿とアルパカの毛から作られた布。斜めの帯状に波打つ蛇がネコ科動物や鳥の図像とつながる形で表されている。
技法は二層生地、側部の帯は綾織。
 
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バラカスの大布。
BC13世紀~AD1世紀。
素材はラクダ科動物の獣毛。
中心的な図案となっているのは、長方形で上下対になっている2匹のネコ科動物である。ネコ科動物は鳥のような2本足と、蛇のように長く伸びる鱗のある体で表現されている。ネコ科動物の胎内に、色の違うネコ科動物がさらに2匹見られる。
周辺部および中心の細い帯状部分のいずれにも、同じ図案のパターンが繰り返されている。ネコ科動物の体の色(黄・緑・黒)が順番に変化しているが、黄色は全ての配色に用いられている。
中心的な図案である2対のネコ科動物とともに、蛇の尾を持つネコ科動物と、幾何学文様化された鳥が表現されている。
大布を離れた所から見ると、中心部の図案のうち、黒や緑などの暗色で縁取りされたネコ科動物が視覚的に横方向の陰を生み出し、黄色のネコ科動物が光を生み出す効果が確認できる。
 
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バラカス文化の織物。
BC13世紀~AD1世紀。
素材はラクダ科動物の獣毛。杖と首級を持つ超自然的人物が表現された布。技法は平織の地に、刺繍による装飾が施されている。
 
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チムー文化の織物。
AD13世紀~16世紀前半。
袖付き貫頭衣(ウンク)およびふんどし。赤の地に頭飾りを付けた権力者あるいは神が表現されているほか、下部に連続的に表現された人物像は波文様を形作っている。
技法は綴織。素材の経糸は木綿、緯糸は染色したラクダ科動物の獣毛が用いられている。
 
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チンチャ文化の織物。手紡績の世界記録。
AD13世紀~16世紀前半。
ラクダ科動物や幾何学文様がデザインされた織物の断片。世界一の極細糸で作られた布で、1インチ(約2.5㎝)に緯糸398年が織り込まれている。
技法は綴織。素材の経糸は木綿、緯糸はラクダ科動物の獣毛が用いられている。
 
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ワリ文化の織物。
AD8世紀~13世紀。
階段文様の末端部に鳥の頭をつけた獣人または神人の頭部を表している布の断片。技法は綴織。素材の経糸は木綿、緯糸はラクダ科動物の獣毛。
 緯糸の細さは世界第2位である。
 
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ナスカ・ワリ文化。ワリ文化影響下のナスカ文化。
AD8世紀~13世紀。
貫頭衣(ウンク)。円、正方形、長方形の文様が見られる。羽根装飾のない縦方向の部分が肩のライン、中心部横方向のラインが貫頭部となる。
平織の木綿の基布に様々な色の鳥の羽根えい結び付けている。
 
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モチェ・ワリ文化。ワリ文化影響下のモチェ文化。
AD8世紀~13世紀。
菱形の中に、杖を持つ人物を横から見た文様を織り表した布。
平織。文様部分は縫取り。一部綴織。平織は白色木綿。縫取りの緯糸には様々な色に染めたラクダ科動物の獣毛が用いられている。
 
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チムー文化。
AD13世紀~16世紀前半。
6等分された織り地のそれぞれに、半月型の頭飾りを付けた人物を表した織物。
綴織。経糸は木綿、緯糸は木綿とラクダ科動物の獣毛が用いられている。

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ランバイエケ文化。
AD8世紀~13世紀。
袖なしの小さな貫頭衣(ウンク)。木の枝葉や獣神の顔が茂るように表現されている。枝にはコンドルが2羽とまっているほか、それぞれの木の中心部に人物が表現されている。
綴織。経糸は木綿、緯糸は木綿とラクダ科動物の獣毛が用いられている。
 
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キープ。インカ帝国期。
AD13世紀~16世紀前半。

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