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ペルー リマ ラファエル・ラルコ・エレーラ博物館 その10  形成期の土器

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石鏃、漁網。先土器時代。
BC8000年~BC2000年。
ラファエル・ラルコ・エレーラ博物館。2015620()
1万年前、それまで狩猟採集生活を営んでいた人々は現在のペルー海岸地帯に定住を開始し、豊かな海洋資源を活用する術を身に付けた。
漁業や狩猟に用いられた石製矢じり。漁業に用いられた木綿製の漁網。
パイハン、ワカ・プリエタ、カラルなどは先土器時代の遺跡である。
 
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土器。土器時代初期。
BC2000年~BC1250年。
漁業や採集を谷あいで営んでいた人々が農耕を開始した。経済や社会が発展するにつれて、農業技術の開発も進んだ。この時期になると、周辺の果実や動物を象り直火で焼き上げた土器が作られるようになった。土器時代の始まりから土器の作成技術が成熟する形成期までに800年の歳月を要した。
この時代の遺跡には、ケネト、クラヤク、コトシュなどがある。
 
古代アンデスの芸術
博物館に展示されている芸術作品のほとんどは、日用品として使用されたものでなかった。実用的な形を持ち、日用品として有用であったとしても、真の目的は現実的なものではなく精神的なものであった。
それらの役割や用途は、儀式で必要とされた液体・物質を入れる儀礼用品、副葬品、イデオロギーの伝達手段、神話や儀式の様子を表現する宗教的手段などであった。
 
古代アンデスの儀礼用土器には、二つの明確な様式が存在する。
北部式は、立体的象形が際立ち、単色あるいは二色使いで、鐙形を特徴とする。
南部式は、多色彩の秀逸な絵付けが施され、形状は橋型双注口を特徴とする。
 
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すり鉢。パコパンパ遺跡出土。
BC13世紀半~AD1世紀。カハマルカ県。
古代アンデスにおいて神聖な動物とされていた鳥、ネコ科動物、蛇を融合した姿が象られている。
 
死者崇拝
古代アンデスの人々は、供物や儀礼によって神々を崇め奉り、死者を崇拝することによって、地下すなわち死者の世界や天上あるいは神々の世界との結びつきが得られると考えていた。
神々の恩恵にあずかるために、人々は儀礼を行い、供物や生贄を捧げなければならなかった。
また、政治的指導者がその死後「先祖」に変化することができるよう、平民は墓の建設や埋葬の儀式を行わなければならなかった。先祖には、社会や宇宙の存続を保証するための権限が与えられていた。古代アンデスの帝国、国家、集落において、クラカや神官、皇帝をはじめとする指導者の死とはきわめて重要な出来事であった。
 
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初期の宗教と芸術。
天空の鳥、地上のネコ科動物、地下世界へのアクセスを持つ蛇は、古代アンデスにおいて神聖な動物であった。そのため、芸術においては、三者の身体的特徴が融合した超自然的な存在が表現された。
この神話的存在あるいは三世界の権力を持つ神が生まれた背景は、社会が拡大するにつれて新たに発生する諸問題に対処する必要性であった。より大きな問題に立ち向かうには、新たな融合神が持ちうるより強大な権力が必要とされたのである。
このような融合神誕生のプロセスは、形成期末期、北部ではビルー文化、サリナール文化、ビクス文化、南部ではバラカス文化において認められる。
 
ネコ科動物、鳥、蛇の特徴を持つ人物
ネコ科動物・鳥・蛇が融合した神聖な存在は人の姿を持つようになっていった。天上・地上。・地下の三世界の力を合わせた強大な権力を有する人物である。このような人物像の例であるパコパンパの石碑では、人間の2本足、ネコ科動物の口、鳥の尾を持ち、体から蛇が長く伸び出た人物が表現されている。
古代アンデス文化の指導者らは政治的、社会的、宗教的権力を合わせ持ち、さらに神聖な象徴を取り入れることで神々に同化した。その結果、鳥や蛇の特徴を持つ擬人化されたネコ科動物の様相が生まれたのである。
 
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土器。クピスニケ文化。
BC13世紀~AD1世紀。
クピスニケは1930年にラファエル・ラルコ・オイレによって発見された文化で約3000年前の形成期に発達した。この時期に神殿の建設が開始されたことから、職人たちは儀礼や副葬用に宗教色の強い土器を制作した。
土器を成形し窯で焼成するさいに使用した燃料の木材から多くの煙が発生したことで、土器は暗色を帯びている。主に刻線による装飾がほどこされた。動物、果実、家や人間の顔などを表現した象形土器が制作された。最大の特徴は鐙型の持ち手である。
 
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土器。神聖な動物。クピスニケ文化。
動物が神の化身として表現された。ネコ科動物は権力と強さのシンボルであった。ネコ科動物が鹿を殺す場面は権力への服従を象徴している。このほか、夜の鳥フクロウやネコ科動物の牙を持つ様式化されたコンドル、蛇などが表されている。
 
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土器。擬人化されたネコ科動物。クピスニケ文化。
顏には人間の特徴に牙やひげ、アーモンド形の瞳といったネコ科動物の特徴が組み合わされている。
 
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土器。ビルー文化。
BC13世紀~AD1世紀。
この文化は1933年、ラ・リベルタ県ビルー谷でラルコ・オイレによって発見された。
主な彩色方法はネガティブ技法。文様となる部分を薄い粘土で覆い、その他の部分を露出させて焼成する。文様部分は薄い色で焼け残り、焼成された周辺部して暗い色になる。
ネコ科動物の頭を持って蛇の上に、鳥が止まっている様子。胸部分にフクロウの顔を持つネコ科動物。4本足の鳥。これら全て鳥、ネコ科動物、蛇の融合した姿である。
 
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象形土器。ビルー文化。
フクロウの頭とネコ科動物の体、蛇の尾を持つ重要人物を表している。
 
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象形土器。ビルー文化。
頭部は人間で体はネコ科動物、尾が蛇の重要人物を表している。
 
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象形土器。サリナール文化。形成期。
サリナール文化は1941年、ラ・リベルタ県チカマ谷でラルコ・オイレが発見した。
土器は窯焼きされる過程で粘土が酸化され、レンガ色のような赤みを帯びる。さらに白い線で絵付けが行われている。「赤い下地に白の絵付け」の技法は形成期末期まで使われ続けた。
ネコ科動物、蛇、フクロウが表現されている。また、死者信仰が非常に重要視され、土器には埋葬前の死体の準備が表現されている。



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象形土器。ビクス文化。



ビクス文化はペルー北部のピウラ県で発達した文化で、ペルーとエクアドル双方の芸術様式が含まれている。
ビクス土器では通常の彩色技法、ネガティブ技法の双方が存在する。
人物はコーヒー豆型の目が特徴的である。
裸の人物を表した象形土器。体はネガティブ技法で彩色されている。さらに、金属製の冠、大ぶりの首飾り、人間の顔が数珠状に連なった首飾りを身に着けている。
 
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パコパンパ遺跡の石像。形成期。
ネコ科動物、鳥、蛇の特徴を備えた女性神が表現されている。のこぎりの歯のような刻み目で表現される女性神の陰部は、他の古代神にも観察される。
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