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古代アンデス モチェ文化の土器 ラファエル・ラルコ・エレーラ博物館 その11  

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モチェ文化の象形土器。
AD1世紀~8世紀。
ラファエル・ラルコ・エレーラ博物館。2015620()
 
モチェ文化の神。
ラファエル・ラルコ・オイレは複数の神々からモチェの神を特定し、ムチック語で権力者を意味する「アイ・アパエック神」と名づけた。
主な神々は擬人化された姿で表現され、以下のような特徴を備えている。
人間特有の直立した姿。ネコ科動物の牙。蛇の形をした耳、ベルトあるいは髪。鳥の頭あるいはネコ科動物を表す頭飾り。
 
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土器。祖先と双頭の蛇。モチェ文化。
顏に入れ墨を施したモチェ文化の男性を表す象形土器。男性は首飾りや胸飾りを身に付け、双頭の蛇のアーチの下に立っている。
双頭の蛇は虹のシンボルであり、男性の身体部分や壺と内部でつながっている。男性は水に関連する祖先を表していると考えられる。
 
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アイ・アパエック神の戦い。モチェ文化。
神話世界が表現されている。アイ・アパエック神が死者の世界に入り、その他の神や魔物と闘う様子を中心に描かれている。アイ・アパエック神はネコ科動物の牙を持ち、頭飾りの正面部にはネコ科動物の頭部と鳥の羽根が表現されている。また、身に着けたベルトの両端が蛇の頭になっている。
 
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細線文土器。モチェ文化。
 
古代アンデスの世界観と芸術。
 
古代アンデスでは自然界のサイクルを知ることは最も重要な関心事であり、人々は季節の巡りのように自然界には独自のサイクルがあることを知っていた。同じく、人間は誕生、生、死を経て死後の世界へ渡ったのち、再び生まれるのだと考えていた。
 
世界を動かす力は相反していると同時に補完しあっている。アンデスの世界観の中心には、二元性の観念が存在する。ケチュア語で、補完しあう二元性を「ティンクイ」とよぶが、これは古い農耕信仰に起源をもつ東洋哲学「陰陽」の観念に似ている。
自然界のサイクルが成立し得るのは、世界を動かす力が常に働いているからである。この運動は、渦巻きのシンボルに表現されている。
 
アンデスの世界は、以下3つの層あるいは世界によって成り立つと考えられていた。
神々の住まう天上の世界(ハナン・パチャ)。
人間や動物の暮らす地上の世界(カイ・パチャ)。
死者の住む地下の世界(ウク・パチャ)。
                                                                                      
これら3つの層は階段文様によって象徴され、上部の半渦巻きはこれら世界が互いに働きかけあっていることを示している。
地上世界において、人間は天上世界と地下世界の力の出会いを確実なものにするための儀式を執り行った。主要な宗教概念や神話が主題に表されたが、モチェ文化の人々は細線文によって儀礼の様子を緻密に表現した。
 
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モチェ文化土器の分類。
ラルコ・オイレは、鐙型の柄の変化を基準にモチカ土器を5層に分類した。ラルコによるこの分類法は1946年から現代考古学においても適用され続けている。
5層の分類基準となるのは、柄および注口の形状、注口の縁部、土器全体と鐙型の柄のバランス、絵付けや象形の内容などである。
この分類は、各土器が収められていた墓の層序にも一致している。
 
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モチェ文化の肖像土器。
モチェ文化は、世界でも稀な本格的な肖像土器を残した。肖像土器は繊細かつ正確に人体工学的な特徴を写し取っており、何らかの印や名前などを参考にすることなく、顏かたちの特徴だけでモデルとなった人物を特定することができたと考えられる。
肖像土器の対象となったのは政治的権力者、神官、戦士、優秀な職人などであり、人物ごとに様々な場面が表現された。
肖像土器には神々の顔も表現されたが、女性の肖像土器の存在は確認されていない。
頭飾りや髪型、体の装飾品、顔に施した化粧などが見事に描写されている。
肖像土器の多くは、チチャ酒などを入れて使用した跡があり、使用後に墓へ納められたと考えられる。
 
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土器作りの技術。
土器職人は、素地土選びから素地土作り、成形、装飾、乾燥、表面仕上げ、焼成に至るまでの全工程に精通することが必要とされる。

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モチカ土器の素地土は、赤色およびクリーム色の粘土、カオリン、白色粘土である。
化粧土への彩色や絵付け用の色素として、酸化鉄を主とする鉱物が利用された。

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成形および装飾用には動物の骨が用いられたほか、型や印も利用された。

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古代ペルー人は、成形に失敗した土器もその他の土器と同じように保存した。
 
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象形土器。モチェ文化。
 
身分の高い人物が、昇降用傾斜路を持つ階段状ピラミッドの頂点に座っている様子。重厚な装飾が施された衣装と、神を表現する頭飾りを身に付けている。神や権力者は、自身の姿にネコ科動物や鳥、蛇といった動物の特徴を取り入れていった。
 
モチェの神と、蟹の姿をした魔物が戦う様子。神の頭飾りの正面部は半月型で、ネコ科動物の頭部が表現される一方、後部には羽毛の飾りによる鳥の尾が表現されている。さらに、耳飾りは蛇の頭の形をしている。
 
ネコ科動物、鳥、蛇が融合した神話的動物を表す壺。トルコ石はネコ科動物の耳であると同時に鳥の目にもなっており、鳥のくちばしは後を向いている。また、ネコ科動物の尾よび体毛は後ろ向きに伸びて蛇の姿を表している。
 
身分の高い人物と神官がコカの葉と石灰を噛んでいる様子。今日においても、コカの葉を噛む行為「チャクチャード」は儀礼の場や疲労回復の効能で、高アンデス社会における重要な役割を担っている。

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