槍、火縄銃、火薬入れ、竹弓、竹矢、竹矢筒。タイヤル族。
国立台湾博物館。台北。
2016年11月26日(土)。
タイヤル族(泰雅族、Atayal)は台湾の中・北部など八つの県の山岳地区に分布しており、その区域は広く、台湾原住民のなかで二番目に大きな部族である。タイヤル族の文化の特色は編織と紋面(顔の刺青)で、なかでも貝や玉を使った衣服は特殊なものある。紋面は、成年に欠かすことのできない象徵であった。
入れ墨。「台湾の原住民族」(宮本延人)より。他の種族では、パイワン族・ルカイ族では頭目一族が胸や腕に入れ墨をするが、最も特徴としたのは、タイヤル族であった。
男子は6・7歳になると、前額の中央部に縦に幅1㎝、長さ3㎝ぐらいの帯状の入れ墨をする。成人すると、下あご部に幅1㎝、長さ2㎝ぐらいの入れ墨をする。前額の入れ墨は、昔は馘首するか、馘首隊に参加して、施すことができた。
女子の入れ墨は、両頬の耳下から唇にかけて、幅2㎝ぐらいの帯状のものを施す。婚期に達したものが入れ墨をするのを一般とする。
入れ墨の用具は、15㎝ぐらいの木の棒の先端部に、歯ブラシの先に似たような形に金属の鋭い針の束を植えたものと、長さ25㎝ぐらいの棒状の木槌と、竈などで採った煤を入れる瓢箪とからなる。
施術の方法は、被施術者を仰向けに寝かせ、片手で針を植えた用具を持って施術する部分に当て、片手で木槌を叩くと、血が噴き出る。これを細い竹皮の輪で拭い、瓢箪の中の煤を塗り込む。施術者の多くは女性で、専門の者が部落内にいる。
ツォウ族(鄒族、Tsou)は南投、嘉義、高雄県内に分布し、山地に居住するエスニックで、狩猟をメインとし、焼畑開墾農業を副業とする。ツォウ族は父系の氏族社会で、各氏族は自分の狩り場と漁場を擁しており、大きな集落には男子の集会所がある。
日本統治時代に阿里山蕃といわれていたのはツォウ族の一部である。首狩りの風習をやめさせようとして、首を狩らせた清朝の通事の伝承は義人呉鳳の話として知られる。
男子は皮の帽子をかぶり、頂上に鳥の羽根を1本つけ、装飾によく子安貝を用いる。胸当てには、刺繍のある方布を斜めに頭から吊るす。脚部はスカート状に膝まである布を巻く。
男性の服飾。ツォウ族。皮製足覆い。
狩りのときに、長い皮の脚絆を両足に着ける。
男性の服飾。ツォウ族。革靴。
ツォウ族集会所。模型。
部族ごとにクバとよばれる集会所があり、部族の共同の祭祀を行なう場所であった。クバは馘首した首級の共同の収蔵所でもあった。
口琴。ツォウ族。
鼻笛。ツォウ族の音楽。阿里山蕃。
「台湾原住民族の音楽と文化」(下村作次郎ほか、2013年)に、現代パイワン族の女性鼻笛奏者サウニャウ氏の論文がある。
鼻笛は主に、ポリネシアやマレーシア諸島の原住民族が使用していた楽器である。台湾以外で使用されているほとんどが、単管鼻笛である。双管鼻笛はツォウ族、アミ族、パイワン族、ルカイ族に残っていたが、今はパイワン族のみで残っている。
双管鼻笛を使っていた原住民族の音楽形式はすべて復音音楽で、曲の中に二つ以上の旋律があって、それらがハーモニーを形成する音楽である。
双管鼻笛のうち片方は指孔がなく音を合わせる機能(通奏低音)を持つ。片方の指孔のある方は話をするように音を出す。復音音楽の歌では、低音の主旋律で歌う人とやや高音で唱和する人がいる。
昔のパイワン族社会では、鼻笛は貴族の男性や勇者とみなされた男性のみが吹くことを許された。その目的は、男性が肉親を慰め死者を偲ぶため、男性が恋愛感情を伝えるため、貴族が結婚のさい花嫁の出身を讃えるためという。