ルカイ族の居住地。魯凱(ルカイ)族文物館。
2016年12月3日(土)。屏東県。霧台。
ルカイ族は中央山脈南部に居住し、パイワン族と接しており、文化的共通性も多い。
「調査報告 台湾の魯凱族 一屏東県霧台郷の少数族群一」(福永安祥)から。
ルカイ族は観念と生活様式において、パイワン族に比して、さらに、「原始的俤を遺存」し「南島文化の古型」、「基本形態」を代表している。この地方に占居して以来、可なりの長年月を経過しているものと考えられる。
ルカイ族の伝承によると、ルカイ族は古くは、北の霧頭山群の附近のcikiplici、とカリアラに居住していたが、人口増加と耕種の田地の不足のため、発展を求めて、台東県の旧大南社から旧好茶村に移転し、以後、今日の6 個村が逐次形成されてきた。霧台郷は、明国の共和時代に溯り、約600年間にわたって、村落の住民が存在していた古い村であったという。
ルカイ族の伝統衣装。
ルカイ族の階層区分。魯凱(ルカイ)族文物館。
パイワン族と同じく、社会的な階層は貴族と平民に別れる。
貴族は大頭目、小頭目の頭目階層。その下の階層に、頭飾り監督者、部落衆長老、配給者がある。
貴族は、各村落の尊敬と象徴の存在、相談役である人物と家族をさし、頭目階級と表現される。
現代の霧台郷は、郷長一村長一村幹事一鄰長(トナリ組長)を結ぶ公権力の行政のシステムと、大頭目・頭目一族民・族人とを結ぶ権威と尊敬のシステムの二元化した社会である。
頭目家は、百歩蛇(猛毒をもつ)の子孫、平民は、普通の青い蛇の子孫であるという伝承があり、、両者の身分的差異を示す。
頭目は、20世紀初頭に日本の統治と治安維持が確立するまで絶大な権勢と広大な土地を所有し、平民は、番租(獵租、農租)などさまざまな貢租を納める義務を負っていた。
頭目の地位は、世襲であって、ルカイ族は長男系属制、パイワン族は長子相続で男女を問わず、時には長女が頭目となることもあって、全島中の特異な事例である。
ルカイ族の頭目は、大頭目と小頭目に分けられるが、大頭目は、土地の所有権をもつ人、貢物権をもつ人、貴族の名字をもつ人、家屋をもつ人で、小頭目は4 つの必要條件を具備していない人をさす。
頭目は、粟(小米)酒を作るときに、最初に飲む人、捧げる人で、頭目が粟酒を飲んで、酒が座を動いていく。
貴族の中にも地位の高低の区別がある。勇士は個人の才能と努力で地位を獲得できる。平民であっても、戦いで敵の首を取ったり、武器を奪ったり、大型な獲物の獲得により、長老と集落の協議で勇士のタイトルが与えられて軍事リーダーになることがある。
ルカイ族の頭飾り。貴族かつ優秀猟師。優秀猟師。女子。
ルカイ族の社会は、一個の階級制社会であって、各個人の社会における地位は、名字、服飾、頭飾などによって顕示される。重大な会合の際には、各個人はすべて、個人の社会的地位を示す盛装をすることが求められている。
頭飾り(頭につける飾りの帽かぶりもの)が代表するところの意義は、1 .熊鷹羽毛…大頭目、2 .藍腹閑、公鶏羽毛…才芸に出衆の人、3 .百合花…貴族の勇士、特殊な身分の男女。
頭飾りの種類。植物の頭飾り。額飾り、環飾り、挿し飾り。
頭飾りの種類。非植物の頭飾り。男子は、瑠璃珠の頭冠、熊毛皮の頭冠、猪毛皮の頭冠、鹿角の頭冠、山羌の頭冠。
栄耀頭飾りの種類。貴族、頭目使者。
栄耀頭飾りの種類。
個人能力。優秀猟師、戦士、救難勇士、品徳倫理。
儀式頭飾り。結親儀式、結拝儀式、結婚儀式。
栄耀象徴の頭飾り。
栄耀象徴の頭飾り。
上左から。大頭目。頭飾授権貴族。
下左から。大頭目。小頭目。小頭目。小頭目。
左、長老の頭飾り。右、猟王の頭飾り。
貴族女子羽毛挿し飾り。
個人能力の頭飾り。
多彩多姿植物頭飾り。栄耀象徴の頭飾り。
百合花は女子の純潔、男子の狩獵優秀を表す。
百合の花は女子の貞節の象徴である。
髪編双層黄水茄環飾。結婚時に着ける栄耀環飾り。
百合の花を着ける資格と呼応する。
「黄水茄」は「黃金茄子」ともいわれ、ナス(茄子)の野生原種でインド原産とされる。適量であれば、肝炎、黄疸、肝腫瘍、肝硬化などの薬となるが、大量に摂取すると毒薬となる。
左、日本統治時代に流行した頭冠。右、未婚女子頭冠。
紙□百合花額飾り。