滝原宮。御手洗場。大紀町滝原。
2017年5月20日(土)。
滝原宮は伊勢神宮内宮(皇大神宮)の別宮で、志摩市磯部の伊雑宮(いざわのみや)とともに、「天照大神の遙宮(とおのみや)」と呼ばれる。
山を背後に南面し、前方には川が東から西へ流れる地勢から内宮の雛型になったとする説がある。
滝原宮は、倭姫命が内宮よりも先に天照大御神を祀った場所といわれ、11代垂仁天皇の皇女倭姫命が、宮川下流の磯宮(いそのみや)から天照大神を祀る地を探すために上流へ遡ったところ、宮川支流の大内山川流域に「大河の瀧原の国」という美しい場所があったので、草木を刈り新宮を建てたが、天照皇大神の神意により、現在の内宮のある伊勢市宇治館町に新宮(五十鈴宮)を建てたため、天照坐皇大御神御魂(あまてらしますすめおおみかみのみたま)を祀る別宮となったとされる。
伊勢神宮は4回ほど参拝しており、滝原宮の前は何度も通過しているが、参拝したことはなかった。道の駅「おおだい」を午前7時ごろ出て、滝原宮に向かった。土曜日の早朝だったので、奥の駐車場へ駐車した。参拝客はまだ少ない時間帯だったので、前方に老夫婦をみかけたぐらいだった。
詰所の職員から挨拶され、御手洗場の標識に従って、道を下ると、河原に出た。伊勢内宮の五十鈴川より川の幅は狭いが、谷水の流れを利用した御手洗場は朝日に輝いて清冽な印象であった。
滝原宮。参道の杉並木。
白砂が敷き詰められた参道の内側には、数mごとに樹齢数百年を超える巨木の杉が立ち並んでいる。朝の光を受けるように歩いて行くと、聖域を歩いているという雰囲気が増していく。
1959年(昭和34年)の伊勢湾台風で外宮内宮の本宮は多くの神宮杉の巨木を失ったが、滝原宮では被害が小さかったため、本宮より杉の巨木が目立つようになったという。
滝原宮。滝原竝宮(ならびのみや)。
滝原宮は二つの別宮が並立しており、右の滝原宮は天照皇大御神の和魂(にぎみたま)、左の滝原竝宮は天照皇大御神の荒魂(あらみたま)を祀るとされる。
滝原宮。滝原竝宮。
この地に別宮が配置されたことは、南に熊野灘沿岸を控えた水陸交通の要地であったためといわれる。
国道42号線を紀伊長島方向へ南進し、やはり素通りばかりしている頭之宮四方神社へ向かった。
頭之宮四方(こうべのみやよもう)神社。入口。大紀町大内山村。
頭之宮四方神社は「あたまの宮」、知恵の水を汲める神社として知られる。
駐車場から橋を渡るときに、社務所、参道と横に流れる川(唐子川)を見て、伊勢では神社は川のほとりに鎮座するものと知る。
頭之宮四方神社。参道から社殿に近付くと、唐子川に落ちる滝が見えてくる。
頭之宮四方神社。手水舎。
頭之宮四方神社。手水舎の水盤石(乳湧石)の説明。
頭之宮四方神社。拝殿。
祭神は唐橋中将光盛卿。桓武天皇の後裔唐橋中将光盛卿の御神霊。
頭之宮四方神社。由緒。
この神社のご祭神は桓武平氏の唐橋中将光盛卿である。中将は、この神社の傍らを流れる唐子川の奥の、岸壁が聳え立つ「中将倉」と呼ばれる高い山の上に城を構えていたという。
あるとき村の子供達が今は境内を流れる唐子川で遊んでいると、川上から髑髏が一つ流れて来るのを見つけた。子供達がそれを拾って遊んでいるところへ、そこに通り合わせたこの村の老人が子供達に向かって「不浄なものであるから」と髑髏を捨てさせて子供達を家へ帰らせた。
すると突然、この老人は気が狂い始めて、大声で何事かを語り出した。
「予は唐橋中将光盛卿なり。今此の辺りにて童子を相手に楽しく嬉戯しているにも拘わらず、汝来たりて予に向かって屈辱を加え遊びを妨げた。若し、予の髑髏を崇め祀らわば、汝の乱心を止め、萬民に幸福を与え、永く守護する。」と宣もうた。
これだけ言い終わると、果たして老人の狂乱は治まったという。これを聞いた村人は畏れ、神殿を造り、その髑髏を祀ったという。以来、霊験あらたかなる事が度々あり、頭之守護神・知恵之大神と尊崇された。
鎮座の始めは建久二年(1191)に「頭部之宮」〈かうべのみや〉と称えていたが、宝永五年(1708)に再び御神託により「四方神社」と称し、「頭之宮四方神社」として現在に至っている。現在の社殿は、平成九年十一月一日に「平成の大造営」が完成したもの。
頭之宮四方神社。ご神徳。
頭之宮四方神社。「知恵の水」入口。「知恵の水」は拝殿の川側奥にある。
頭之宮四方神社。「知恵の水」。水汲み場には家族連れがいた。手前右側には「頭の石」がある。
頭之宮四方神社。「知恵の水」。石造りの蛙から湧く御神水。
若返りを有する水として「若水」に相通ずる聖水信仰である「変若水(おちみず)」としても信仰されている。
水量は少ない。持参のペットボトル3本ほどの分量を頂いた。
頭之宮四方神社。「お頭さん」。
唐子川から引上げられた石で、角度によって顔の表情が見えるという。
頭之宮四方神社。「知恵の水」、「お頭さん」の説明。
頭之宮四方神社。神蛙の説明。
このあと、志摩半島の五カ所湾へ向かった。