旧豊宮崎文庫跡。国史跡。伊勢市岡本。
2017年5月20日(土)。
この文庫は、内宮の林崎文庫とともにわが国における図書館史上に異彩を放つ施設である。
伊勢神宮には内宮に「文殿(ふどの)」、外宮に「神庫(しんこ)」という建物があり、書籍などが収められ学問の場でもあったが、禰宜以下の者には利用が許されていなかったため、慶安元年(1648)、外宮権禰宜で国学者でもある出口延佳の首唱により、祠官、山田三方、町年寄りの協力の下に、一般の者にも利用できる文庫を創設した。
文庫の経営は籍中と称される有志により行われた。また、寛文元年(1661)、山田奉行所八木馬守の幕府への請願により、文庫の永代修繕費として幕府から20石の寄進を受けた。
以来、外宮祠官子弟の修学道場として発達し、図書館と一種の学校の生活を併せ持ち、文庫内には書庫、講堂等があり、また17条の文庫令条を設け、毎月一定日に神典、儒書等の講義が行われた。
貝原益軒、伊藤東涯、大塩平八郎ら多くの碩学の来講もあり、公家、山田奉行、御師、学者等からの多くの書籍の奉納で、充実した施設となった。
明治元年(1868)、この文庫は廃止され、宮崎学校が開設された。同11年には火災により講堂が焼失した。しかし、厄災を免れた二万余冊の書籍類は神苑会を経て同44年に神宮へ献納され、現在は神宮文庫に所蔵されている。
現在、建物としては左右に築地塀がつく本瓦葺きの三間棟門と石碑のみが残っている。
古市から外宮に向かい、外宮の南の道路沿いにある文庫跡を見学しようとしたが、伊勢市立郷土資料館が閉館したため、駐車場もなく、近所に路駐せざるをえなかった。
外宮(豊受大神宮)。勾玉池と舞台。
内宮には何度も参拝しているが、外宮には1・2回ぐらいしか参拝していない。
外宮(豊受大神宮)。正殿。
主祭神豊受大御神(とようけのおおみかみ)。
正宮は、正殿・西宝殿・東宝殿の3つからなるが、幾重に板垣が巡らされており、拝所からは直接見ることはできない。
正殿は、弥生時代からの高床式の穀倉の形式から発展した建築様式と飛鳥時代の仏教様式を一部取り入れた唯一神明造の掘立柱建物で、檜の素木を用いており、屋根は萱葺きである。
外宮の正殿は、内宮の正殿と構造・様式は基本的に同一であるが、棟にいただく鰹木が9本で、内宮より1本少なく、東西の先端の千木(ちぎ)は内宮の正殿とは異なり垂直に切られている。
別宮の滝原宮、伊雑宮を参拝したので、内宮・外宮の中で第一位の別宮である荒祭宮・多賀宮を初めて参拝することにした。ほかの別宮は時間がなかった。
外宮。多賀宮(たかのみや)。
御池にかかる亀石を渡り、98段の石段を上った檜尾山とよばれる小高い丘の上に鎮座する。
多賀宮は、外宮に所属する四別宮のうち、第一に位し、殿舎の規模も他の別宮よりも大きく、正宮に次ぐ大きさで、正殿と同じ年に遷宮が行われる最も格式の高い別宮である。
豊受大御神の荒御魂(あらみたま)を祀る。
神様の御魂のおだやかな働きを、「和御魂にぎみたま」とよび、荒々しく格別に顕著なご威をあらわす御魂の働きを、「荒御魂」とよぶ。
16時を過ぎていたので、内宮方面へ急ぐ。
旧林崎文庫。国史跡。伊勢市宇治今在家町。
内宮を参拝する前に、場所を見つけたたかったが、駐車場から内宮へ歩こうとしたら、駐車場の中程に林崎文庫へ向かう坂道の入口を偶然に発見した。特別公開時以外は立入り禁止である。
1686年(貞享3)に宇治会合所の大年寄らが外宮の豊宮崎文庫にならって創立したもので、翌年に文庫を丸山の地に設けて内宮文庫と称した。次いで1690年(元禄3)に土地が低い丸山から北隣の林崎に移転し、以来、林崎文庫と呼ばれた。
この文庫を高名にしているのはその蔵書であり、京都の呉服商で国学に関心の深かった村井古巌(こがん)の寄贈書をはじめとして諸家の寄付によるものが多く、貴重な書物が残されている。本居宜長も援助を惜しまず、今も石碑に刻まれている「林崎ふみくらの詞」を贈っている。
天明年間(1781~89年)と文政年間(1818~30年)に整備拡張され、敷地の改修や建物の修繕が行われたが、明治維新後は廃されて、建物や蔵書は伊勢神宮に献納された。
内宮(皇大神宮)。宇治橋。
内宮。五十鈴川御手洗場。
内宮。正宮入口。建物は外部からほとんど見えない。
17時を過ぎていたが、参拝客は外国人を含めてまだ多い。
内宮。荒祭宮(あらまつりのみや)。
内宮の境内別宮で、祭神は天照坐皇大御神荒御魂(あまてらしますすめおおみかみのあらみたま)で、荒魂を祭る宮。
内宮の別宮は、荒祭宮、月讀宮、月讀荒御魂宮、伊佐奈岐宮、伊佐奈弥宮、瀧原宮、瀧原竝宮、伊雑宮、風日祈宮、倭姫宮とあわせて10あるが、その中で荒祭宮が第1位とされる。
他の別宮よりも社殿が大きく、皇室の勅使は正宮に続き、内宮別宮のうち荒祭宮のみに参行する。また、神御衣祭(かんみそさい)は外宮では行わないが、内宮正宮と荒祭宮では毎年5月と10月に行なわれる。
荒祭宮の社殿は内宮に準じ、内削ぎの千木と、6本で偶数の鰹木を持つ萱葺の神明造で南面している。
初めて参拝したが、荒祭宮への参拝者も多かった。
17時30分を過ぎたので、車中泊まとめWikiで見つけた度会町棚橋の「宮リバー度会パーク」駐車場へ向かった。