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狗奴国の前駆都市 東海地方最大の弥生集落 「朝日遺跡、よみがえる弥生の技」の記念展・講演会

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愛知県清洲貝殻山貝塚資料館。中央の貝塚の左奥に資料館がある。平成25年5月18日(土)に開催された「朝日遺跡、よみがえる弥生の技」の講演会・シンポジウムを拝聴した。東海地方最大の弥生集落である朝日遺跡の出土品が国重要文化財に指定された記念の同名の記念展が、愛知県清洲貝殻山貝塚資料館で5月19日まで開催され、その関連事業であった。中日新聞の夕刊で2回紹介されたので、開催を知った。今年1月に告知があったようだが、旅行していたので気づかなかった。
名古屋市西区と清須市に所在する朝日遺跡は著名であるが、見学したことがなかったので、まず貝殻山貝塚資料館を訪れた。かつての東海銀行が母体の東海財団が寄贈した小さな森の中に貝塚の丘と記念館があった。しかし、貝塚は公開展示されておらず、朝日遺跡の逆茂木・乱杭などの復元展示もないようで、吉野ケ里遺跡などとは雲泥の差の愛知・名古屋の文化行政の貧困さが如実に表れていた。
貝殻山貝塚資料館の展示資料はさすがに逸品ぞろいだが、愛知県の歴史博物館がない状況では今度何時展示されるのか寂しくなる。
事前に「幻の王国・狗奴国を旅する」赤塚次郎著、2009年、風媒社を読んだので、朝日遺跡の概要は理解した。同書によると、狗奴国の王都の最有力候補は愛知県一宮市の萩原遺跡群・八王子遺跡などで2~3世紀頃の邪馬台国の天下大乱の時代に相当する。これに先行する朝日遺跡は弥生時代前期から始まり、BC4世紀から発達し、その全盛期の終焉はAD1世紀後半頃とされるが、伊勢湾沿岸での生産交易の中心地として繁栄していた。岩波新書のシリーズ日本古代史「農耕社会の成立」石川日出志によれば、弥生時代後半に全国各地で2度の集落改廃期があったという。後者が、邪馬台国の天下大乱期にあたるが、何れも気候変動が原因のようだ。ただし、朝日遺跡の居住域には洪水被害の形跡はないという。
貝殻山貝塚資料館で展示資料を見学撮影したのち、清須市立図書館のサテライト展示を見学し、13時から清須市民センターで講演会を拝聴した。
元奈良文化財研究所副所長・深澤芳樹氏の講演は、中国・韓国の遺跡例との比較という観点から朝日遺跡の歴史位置を示して、興味深く、シンポジウムでの発言も部外者として総論的観点から指摘していた。安城市亀塚遺跡の人面文は左右対称という特徴がある。前頭部と眉毛は剃っていたらしい。最上級の鯨面文身を表象している。同様の鯨面は山東半島の越国の風俗として知られる。東之宮古墳の禽獣鏡は注目に値する。土器製作者は全員右ききで機織りも同様。朝鮮や日本は翡翠色の玉を好むのに対し、中国は赤系統をも好む違いがある。古九谷は青と緑だが、そういう美意識を受け継いでいるのかと感じた。
シンポジウムでの質問のうちに、「狗奴国」関連があったが、赤塚次郎氏が出席していないので、この席では対応しないと司会者側が答えていた。

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三遠式銅鐸。近くの平田住宅遺跡からは弥生時代中期前葉の日本での最古級の銅鐸製作遺構が出土した。

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石鏃が刺さったシカの骨。矢負いのニホンジカ。後ろ脚の付け根周辺の第六腰椎骨。矢の先端に付けられた石鏃は伊勢湾地域特有の五角形で青灰色の石材を加工したもの。傷が癒えかけた状況からシカは射られたのち逃げ、再度捕えられという。狩猟なのか、祭祀なのか深澤氏が質問すると、運の悪いシカだという回答があった。

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パレススタイルの赤彩土器。東海地方独特のベンガラを塗った土器。

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円窓付き土器。謎の土器とされ、祭祀用と推測されている。伊勢湾地域から近江、丹波方面へ伝播したという。九州北部などにもあるが、各地域の独自色があるという。

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沈線文系土器。頸部がすぼまり、口縁が大きく開く壺型土器。縄文文化の伝統を引く沈線文が刻まれている。岩倉市大地遺跡の出土資料を標式とし、尾張、飛騨・北陸に分布し、西の弥生文化と東日本の在来文化の折衷形式とされる。
朝日遺跡の土器からは、海産物を煮炊きした跡がみられる。

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S字甕。S字状口縁台付甕。2・3世紀の伊勢湾地域を特徴づける土器。東日本にも伝播した。一宮市の萩原遺跡群に多く出土するようだ。同時期の朝日遺跡からも出土するので、土器類の棚にあるか、係員に尋ねるとここにはないというと、見学者の一人が、ここに一つだけあると教えてくれた。口縁部のS字は蓋受けのためのものとのこと。実際にはS字は分かりづらかった。

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S字甕。図録から。狗奴国伊勢湾沿岸説の重要な物証と、赤塚氏は評価している。

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ガラス玉が埋め込まれた壺。赤彩壺の口縁内面に水色のガラス玉が埋め込まれている。ガラス玉は、土器を整形し文様を施したのち、粘土が固まる前に埋められた。
朝日遺跡では多様な工房が営まれた生産地で、交易の拠点でもあった。

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シカが描かれた筒形土製品。鋸歯状文・斜行線文の文様帯の間に、頭部を左に向けた連続するシカの絵が描かれている。

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線刻人面文土器。

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発掘された人骨。

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木製品。把手付き槽と裏側の写真。

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朝日型長身鏃。先端に段を持ち、身の平面が五角形を呈する有茎の打製石鏃は、東海地方の典型的な石鏃である。長さが3僂鯆兇┐訥溝腓覆發里蓮朝日遺跡の名を冠して「朝日型長身鏃」とよばれる。石材は下呂石、チャートの他、近畿地方のサヌカイトも用いられている。

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縫い針。骨角製。横には布跡が付着した土器が展示されていた。

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卜骨。火のついた棒で骨の表面を焼き、焦げた跡で吉凶を占った。弥生時代に、農耕とともに大陸からもたらされた風習。朝日遺跡では、シカやイノシシの肩甲骨を用いた卜骨が出土している。

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弭(ゆはず)形鹿角製品。弭(ゆはず)は弓の両端の弦をかける部分のこと。鹿角の先端部を加工して作られており、下端はソケット状になっている。中程に横位の直線文を彫刻し、5段の孔を開け、鹿角で作られた栓がはめ込まれている。

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巴形銅器。巴形銅器は弥生時代後期から古墳時代にかけて作られ、弥生時代の資料は北部九州を中心に見つかっている。朝日遺跡出土品は弥生時代後期初頭に属し、全国的にも古い特徴をもっている。平成14年度の調査で出土したもので、東海地方では初めての出土例。

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銅鐸の飾り耳。

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袋状鉄斧。鍛造の有肩袋状鉄斧。袋部は薄く伸ばした鉄板を内型(柄張り)に巻き、鍛打ちして身に巻き付けて成形するという高度な技術が用いられている。

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